宴席があると更新を怠る無精者なわけで、誰かと語らうバーカウンターでも気軽に更新できる術があるといいのになと思う今日この頃。
精神と時の部屋に週イチではいれると色々捗るのにな。
ということで、今回は前回に続いての確率統計分野を進めることに。
この分野に比重を置くのはどうなのよという声をときどき耳にするが、この分野を題材にツールとしてΣ計算や集合論とかを学べると、一つの切り口としていいのかなと思うけど、うん。
問題
解説
(1)慣れている人にはなんてことないけど、慣れていないと「確率変数」という言葉に躊躇するかもしれない。
今、$X=2a$となる確率を問われているけど、単に$2a$となる確率と問われても話は同じわけで、この$2a$の部分を一般的に扱えるようにしたものと捉えておけば十分だ。
そもそも用語なんてある現象をパッケージ化したものなわけで、極論すればだらだら長い説明を繰り返すのを避けるために、一回ちゃんと説明しておくから次からこの言葉を見たらその説明を思い出してねというものでただの便利ツールなわけだ。それはもちろん、話し手側の効率化ということだけではなく、毎回センテンスに開いて理解せずに一つのパックとして扱うことで現象自体を一つ上のところから俯瞰して考えることに寄与するものになる。
意味わかんねーよと言われそうだが、例えば悲しいという感情の用語を例にしてみる。悲しいという言葉がなかったら、ボクらは都度悲しい感情を人に説明するたび、そのストーリーを説明し、いま自分がどのような心の状態にあるかを伝えなければならない。そこで、そこに抱いている感情に「悲しい」という名前をつければ、端的にその言葉を伝えるだけでどのような状況にあるのかがわかってもらえるようになる。
そして、悲しいという言葉が使えるようになれば、感情の一分類として捉えることができて、どんなときに悲しいと思うのかという整理をすることで、行動に対する予測(こんなことをすると悲しくなるだろうということ)につながる。これは「悲しい」という言葉がないときには難しい行為だ。
数学においても同じ取り組みがあって、名前・用語を用意することで一般化したところでの議論にすることができる。確率変数の言葉の導入はまさにそれだ。
ちなみに、先程の感情の話を例にとっても、なんでもパッケージ化すれば便利だねということでもない。ざっくりと理解するためのコミュニケーション目的ではとても有効だけど、あくまで共通部分を抽象化した行為なわけで、昨日悲しいと感じたことと、今日悲しいと感じたことは基本的には異なるはずだ。
スピードワゴンの小沢さんが、
「愛してる」って言葉は最初にこの言葉を使った人がその言葉を使った相手に対して抱いた感情を表現した言葉であって、今目の前の女の子にボクが持っている感情とは別のはずだ。だからボクはこの感情に名前をつけようと思う・・・
という感じのくだりを話すことがあるが、まさにこれだ。ボクら本当は違うものを同質のものとして束ねていることを忘れてはいけない。
ずいぶんと話がそれてしまった。問題自体はとても簡単で、$2a$になる確率だから、$a$枚中の1枚を引く確率でどのカードが特にでやすいなんて設定はないので、
$P(X=2a)=\dfrac{1}{a}$
となる(ア、イ)。
続いて、$a=5$と具体的な値にして考える問題だ。
確率の問題って、ギャンブル発祥なだけあってとても想像しやすい問題が多く、感覚的に捉えてしまうことが多々ある。しかしこの分野においては、感覚的に捉えると現実が異なったりどうなっているか見えなくなるといったことがあるので、その態度は実は要注意だったりする。
例えば、モンティ・ホール問題(下の記事)や条件付き確率の諸問題なんてその傾向が顕著だ。
神様が用意した罠に引っかからないようにするのはなかなか大変なことだ。回避するための有効策のひとつとして、定義や数学的条件にそって定量的な判断領域を広げることがある。
定性的に捉えるから、自身の経験というバイアスが邪魔して変な立式をしてしまう。定義に沿って、極力定性的な部分を排除することが重要だ。多分この辺は、多くの人が逆のイメージをもっているような気がしている。
今問題で問われている、平均や分散も値を求めるときには邪な思いは持たず、まずは定義どおりの計算を着実に行おう。計算結果をみてあーだこーだいう分には、それ以上発展的な計算がなければ問題ない。数式から意味を読み取るとはなかなか難儀な作業なのである。
ということで計算しよう。
平均:
$E(X)=\dfrac{2+4+6+8+10}{5}=6$
分散:
$V(X)=E(X^{2})-E(X)^{2}$
$=\dfrac{2^{2}+4^{2}+6^{2}+8^{2}+10^{2}}{5}-6^{2}$
$=8$
となる(ウ、エ)。
次に、$sX+t$の平均と分散を考える。
ここで、$X$ってカードに書かれた数字だったから・・とかは一切考える必要はなくて、素直にそれぞれの式にいれて計算をしてみる。平均と分散でそれぞれ一つずつ式が立式できて、未知数が2個なわけだから求まるでしょという予想はたつ。
平均を計算すると、
$E(sX+t)=sE(X)+t$
ここで、定量的に扱うことは一つポイントなわけで、ということはこういう計算上の性質はしっかり抑えておきたい。
$=6s+t=20$
となる。
続いて分散を計算すると
$V(sX+t)=s^{2}V(X)$
$=8s^{2}=32$
これらから、
$s=2$
$t=8$
と求まる。
このとき
$sX+t$が20以上である確率
$\Leftrightarrow$
$2X+8$が20以上である確率
$\Leftrightarrow$
$2X+8\geqq 20$である確率
$\Leftrightarrow$
$X \geqq 6$である確率
$\Leftrightarrow$
$X=6, 8, 10$である確率
なので
$P(X \geqq 6)=\dfrac{1}{5} \times 3=\dfrac{3}{5}=0.6$
と求まる(キ)。
ひたすらただの計算でした。
今回はここまで。

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