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余弦定理って便利だね。

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公式集を築いていくぜ!って鼻息荒くしたものの、一つも掲載できていなかったのでそろそろ着手しようと決心。

 

インデックスがちゃんと整理できていれば、どのジャンルのどの公式から始めてもパズルのピースを埋めていくような作業だから大差ないわけで、そうなると優柔不断なボクは判断に迷ってしまうわけだけど、とりあえずなんとなく余弦定理を選んでみた。

 

まず肝心の定理を見てみる。

余弦定理

任意の$\triangle{ABC}$において、以下が成立する。

$BC^{2}=AB^{2}+AC^{2}-2AB \cdot AC \cos \angle BAC$

 

ながめてみると、ふとあることに気づく。

 

おお、三平方の定理に似ている。

 

後ろの $-2AB \cdot AC \cos \angle BAC$がなければ三平方そのもので、余弦定理にその名を冠させた所以となる$\cos$がこの部分に含まれている。

 

ということはつまり

 

余弦定理とは、三平方の拡張版(直角三角形でなくてもいいよ版)

 

ととらえることができるということだ。大した話じゃねーよと言われてしまいそうだが、初学者によくありがちな

「この定理どんなときに使うんですか」

という質問には簡単に答えることができる。

三平方の定理をどんなときに使うか考えてごらんよ」

である。 三平方の定理は超有名人だから取扱方法は多くのところで目の当たりにしてきたはずだ。それがほぼそのまま当てはまる。

 

ちなみに三平方の定理は、辺の長さを求める道具という見方以外にも、定理の式が成り立っていたらその三角形は直角三角形と判別できるという利用法もある。これも一般化したケースで考えれば、辺の長さがわかっていれば、角度(の情報としての$\cos$の値)がわかるツールとしても解釈ができる。

この使い方の場合、

$\cos \angle BAC = \dfrac{AB^{2}+AC^{2}-BC^{2}}{2AB \cdot AC}$

 という表現にしておくと便利だ。

 

とういうことでこの余弦定理の証明をしたいが、その前にひとつ。

 

ときどき

公式は証明を理解していないと使っちゃ駄目なの?

という質問が挙がるが、ボクの答えは

理解してると便利だよ

である。

 

 

証明を理解していないと、論証する過程で自分が論証できないツールを使うことになるので不完全だ

なんて意見を聞いたことがあるけど、 数直線がきれていないことを証明できるかとか、自然数の議論をペアノの公理からはじめられるかという話にも繋がるわけで、ただの理想論でしかない。

 

少なくとも一定のレベルに達するまでは、数学における検証済みの事実とされているものは盲目的に一旦信じて、余力ができたときに後から戻って再検討で問題ないし、そもそもペアノの公理のペアノさんだって、公理を考え出す前から自然数を扱っていたはずだ。

 

でも一方で、証明の過程で先人たちの智慧とも呼べるような解法が使われているような場合、その導出手法自体が別の問題を考える武器になったりするし、そんな鮮やかな解法でなくても暗記を回避する策になったりもするので、

理解してると便利だよ

というわけだ。

 

ということで、証明(の解説)へ。

 

証明

そもそも余弦定理とは、三角関数を用いた定理だ。ということは、自然と背景に円が現れることになる。

 

どういうことかというと、三角関数は名前こそ三角だが、変数となる角度を一般角とした場合、もはや三角形は直接的には姿を失い、単位円で定義されることになる。

 

そうだっけ?という人のためにも定義をここで確認しておこう。

 

定義

半径$1$の単位円の円周において、$(1,0)$の点から中心角$\theta$回転した位置の座標を

$(\cos \theta, \sin \theta)$

とする。

 

というものだ。単位円の円周上の点として定義されるから、当然半径$1$の円の方程式

$x^{2}+y^{2}=1$

の式を$(\cos \theta, \sin \theta)$は満たすわけで、

$\cos\theta^{2}+\sin \theta^{2}=1$

 が成立することもわかる。

 

で、具体的に余弦定理を考えていくと、まずは任意の三角形が舞台だから、この三角形と単位円をどう絡ませるかを考えてみる(別に毎度丁寧に単位円を当てはめなくてもいいんだけど、ここでは丁寧に取り扱ってみる)。

 

余弦定理に出てくる角と三角関数で定義される角は同じように取り扱いたいから、三角形と円を図のようにおいてみる。ここで円は単位円ではなく、$AB$の長さに合わせて半径をとる。

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$\angle BAC=\theta$、$AB=c$とすれば、$B$は$(c\cos \theta, c\sin \theta)$とおける。

 

今、証明したい余弦定理の式は辺の値がすべて2次式になっている。ということは、なんらか2乗する局面が必要になるんだけど、次数上げという観点では面積を考えるということもあるけど、ここでは垂線をひいて三平方の定理を考えてみる。

 

だって、三平方の定理に形が似ていて、三平方の定理を使えばいい感じに式が出てくるんじゃないのと期待ができるからだ。

 

といっても直角三角形はいま2種類存在しているように見える。垂線をおろした足を$H$とおけば、$\triangle{ABH} $と $ \triangle{BH} $$C$ だ。

 

でも$\triangle{ABH} $で考えても、定義をたどって元鞘に戻るだけだから、$ \triangle{BH} $$C$に期待を寄せることになる($\triangle{ABH}$が元鞘の意味がわからなければ、一度計算してみるといい)。

 

$ \triangle{BH} $$C$に三平方の定理をあてはめてみる。

$BH^{2}+HC^{2}=BC^{2}$

ここで、$BH=c\sin \theta$、$HC=b-c\cos \theta$となり、$BC=a$とおくと

$c^{2}\sin^{2} \theta +(b-c\cos \theta)^{2}=a^{2}$

$c^{2}\sin^{2} \theta +(b^{2}-2bc\cos \theta+c^{2}\cos^{2} \theta)=a^{2}$

$c^{2}\sin^{2} \theta+c^{2}\cos^{2} \theta=c^{2}$であることから 

 $c^{2}+b^{2}-2bc\cos \theta =a^{2}$

となって余弦定理が期待通り現れた。■

 

ちなみにこれは鋭角を前提としているが、鈍角でも議論はさして変わらない。

 

とりあえず公式第一弾はこんな感じで。

 

高校‐大学 数学公式集:第I部  高校の数学

高校‐大学 数学公式集:第I部 高校の数学