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三角関数不要論?数学の恩恵を受けることは簡単だけど、自分で数学を利用して利益を得ることは難しい

定期的に出てくるこの話。
ニュースとしては、過去にどこぞの県知事が大人になったた使わない話をした時以来だろうか。今回は、
「三角関数よりも金融経済を学ぶべきではないか」
ととある議員が発言したことが波紋を広げている。

 

news.yahoo.co.jp

 

以前のどこぞの県知事のときは、ニュース自体には触れず、こんなときこそ定義を確認しようぜという内容で記事を書いた。
ブログ移行前の記事だったので、焼き直し版がこちら:

www.mathbanker.info

 

で、今回は内容に触れてみたい。

改めて振り返ると
・多くの庶民にとって金融経済(金融リテラシー)が重要であること
・三角関数(を代表とする高等数学)は、特定の人が専門的に学べばよいこと
と発言している。

 

「サイン、コサイン、タンジェントなんて大人になって一度も使っていないから、不要だ!」
という発言とは異なっていて、将来その知識を活かしたい特定の人だけが学べばいいはずだ、といういわば「学びすぎ」なところへの批判となっている。かつ、この「学びすぎ」が「金融リテラシーの低迷」に起因しているために、現状教育課程の学習の時間配分に異を唱えている。

 

世の中には、この今回の発言を数学の否定のように捉えている向きもあるが、それは間違いだ。ただ、学ぶ優先度が金融経済に劣り、現状のような高度な分野まで多くの学生に学習を強いること否定しているのであって、数学自体を批判しているわけじゃない。

 

で、ボクの感想。
どこかの学校や学習塾がそこの方針として打ち出すのであれば特色があっていい方針だと思うけど、国全体の方針としては相応しくない。
学校教育は個人の成長を促す役割の他に、国家戦略としてどんな人材を求めるか、ということがある。基本的には、将来どんな職業を選択しても自由なんだけれども、GDPが高くなるような方向に教育できれば、国民の豊かな生活と国の税収拡大に寄与する。

 

金融リテラシーには、投資の観点と資金管理の観点がある。
多くの国民に必要なのは、後者なはずだ。年収がたかが知れている一般人が一攫千金求めて投資する、ということでなく、貯金するくらいなら投資しようぜくらいの話だと思うが、その貯金額が個人別ではほとんどない人がとても多い世の中だ。なけなしのお金をちょっと投資するよりも、副業でバイトした方が圧倒的に儲かる。その点で、投資するより、いかに効率よく働くかの方が庶民には重要だ。

 

一方で、資金管理は一般庶民にとってとても重要なテーマだ。安易に借金をしない、保証人にならない、リボ払いをしない、といったことをその仕組みから理解して、なんとかお金を巻き上げようとする人たちから防御する術を体得することは、少ない資産の利用の最適化の観点からは必須だと思う。冷静なときに、どんな行動が何につながり、入口でなにをやってはいけないか、ということを学習しておくべきだ。

 

しかし、このことが数学を学ぶことより重要なことだろうか。できるだけ多くの国民が無駄に破産しないようにすることは確かに大切だけれども、国の発展の道具にはならない。一方で、数学教育を施すことは科学技術への超シードマネーのように捉えることができる。科学技術への投資を重要なものと位置づけているのならば、後に役に立たないと嘆く人が大量にでてきたとしてもそれを上回る果実があれば問題ない。嘆いて借金漬けになってしまう人の救済として、その次段階として金融リテラシーが入ってくるのではないだろうか。そしてそれは勿論数学を犠牲にするのではなく、別の科目で代替を探るべきだ。

 

数学の恩恵を受けることは簡単だけど、自分で数学を利用して利益を得ることは難しい。だからといって、不要論を持ち出しては、将来世代の恩恵を削るリスクにならないだろうか。