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【問題解説】センター試験平成29年度本試験 IA 第2問 (3)

あけましておめでとうございます。

気付いたら年を跨いでいました。

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どれも公式を覚えていれば大したことはありません。あえてポイントを問われたならば、定量的に取り扱うことです。この分野って定性的な側面、すなわち統計的にデータの分布状況をどのように解釈できるかをとかく説明されがちで、それはそれでたしかに重要なのですが、どのように計算すべきか、変数変換したときにどのような特徴をもつのか等数学的事実のほうをないがしろにされがちです。今回の問題はその辺がポイントです。

ある現象を、道具として統計を使って解析し、何かの進展を得るという流れにおいては、意味を理解することは大切です。しかし、数学の一分野として取り扱うわけですから、まずは与えられた定義式・公式等にどう計算するのか、どんな数学的性質があるのかをしっかり理解する必要があります。

具体的に問題を見ていきましょう。2つの変数の組み合わせの分散、共分散、相関係数について、 $$ X=1.80 \times (D-125.0)+60.0 $$ という変数変換を前提に、比率をそれぞれ問う問題になっています。ここで、分散は数値の散らばり具合を数値化したもので・・・という知識は役に立ちません。どう定義された式がどのような特徴のもと計算されるのかという数学でよくある態度をここにも平等に当てはめることのほうが有効です。

ここで、この変数変換の式$X=1.80 \times (D-125.0)+60.0$は、競技的側面から意味のある形なんでしょうが、数学的観点から見ると$X=1.8D$の直線を$D$方向に$125$、$X$方向に$60$平行移動したものと読めます。

一般に$Y$の分散$s_{Y}^{2}$は、$Y=aX+b$の変数変換を施すとどうなるかを確認しておきます。 分散は、偏差の2乗平均ですからこの部分をまず考えてみると、 $$ Y-\overline{Y}=(aX+b)-(a\overline{X}+b)=a(X-\overline{X}) $$ $$ (Y-\overline{Y})^{2}=a^{2}(X-\overline{X})^{2} $$ となります。あとはこれの平均をとるだけですが、この計算が意味するのは変数変換の$b$に当たる部分、つまり平行移動の部分は痕跡を消されてしまうということです。これは、偏差とは相対的なものなので、当たり前な人には当たり前な出来事です

するとこの問題においては、$1.8$だけが意味があり、分散の場合は2乗になるので

$$ {1.8}^{2}={2}^{2} \cdot 0.9^{2}=4 \times 0.81 =3.24 $$

となります。ゆえに分散は$3.24$倍となります

ちなみに${1.8}^{2}$をわざわざこう計算しているのは、暗算のためです。筆算で計算するのもアリですが、$4 \times 81$くらいは簡単なのでこう頭のなかで変形できれば暗算で算出できます。暗算だと小数点の位置が…という人は、小数点を一度無視してください。すると$324$とでます。一旦$324$と書いたあとで、$1.8$というおよそ$2$の数を2乗していることから、$3.24$だとわかります。

この調子で共分散相関係数も考えてみます。 共分散は偏差の積だと問題文が教えてくれています。 先程と同様に一般論から確認します。問題とは無関係な$Y$、$Z$に対し、共分散$s_{Y,Z}$は、$Y=aX+b$の変数変換を施すと

$$ Y-\overline{Y}=(aX+b)-(a\overline{X}+b)=a(X-\overline{X}) $$ $$ \therefore (Y-\overline{Y})(Z-\overline{Z})=a(X-\overline{X})(Z-\overline{Z}) $$

となります。これの平均を計算すると共分散になるわけで、先ほどと似た状況です。唯一の違いは、$a$が2乗されていないことくらいです。ゆえに共分散の場合は、$1.8$倍となります。

さらに同じ一般論を相関係数に当てはめて考えてみます。 一般に相関係数

$$ \frac{s_{X,Y}}{s_X\times s_Y} $$

と表わされます。これに問題にある変数をあてはめてみると、

$$ \frac{s_{X,Y}}{s_X\times s_Y} $$

$$ \frac{s_{D,Y}}{s_D\times s_Y} $$

の比較をすればよいことがわかります。 相関係数分子の共分散分母の標準偏差で構成されています。 これらは上2問ですでにそれぞれ$1.8$倍と$\sqrt{3.24}$倍とわかっています(標準偏差は分散の平方根)。 ゆえに分子で$1.8$倍、分母で$s_X$は$s_D$の$\sqrt{3.24}=1.8$倍となることから、分数全体=相関係数は1倍となることがわかります。

今回はここまで。

恒例の最後に宣伝。よろしく。