順番通りに29年度の2Bから手を付けるか、旬な今年のものに手を付けるか考えた結果、後者を選びました。
とはいえ、順番の問題なので、終わったら2Bに取りかかります。
センター終わったけど、センター以外の試験にもきっと役に立ちます。あと数学が趣味な方も是非。
では第1問から。
ダラダラと展開してみたり、$(5-x)$が両辺共通だと見抜いてそれを一塊にして展開してみたりもいいですが、等式がでてきたときはまずそれがどんな等式なのか考えてみることをおすすめします。
以前にも話したことがありますが、ひとえに等式といっても種類があります。
それは、
- 方程式
- 恒等式
- 定義式
です。定義式は定義するときに使うもので、あえて$:=$と表したりするくらい毛色が違うので、肝要なのは上2つの違いです。
=(イコール)を左辺と右辺をつなぐ橋だとみたてたときに、
- 方程式は橋を渡れる人が存在していること
- 恒等式はどんな人でも橋が渡れること
を意味しています。方程式は日常会話でもよく耳にしますが、恒等式はそうではない為、等式を見た途端なんでも方程式と呼ぶ人が少なくありません。
その為か折角恒等式なのに、それゆえに使える技が看過されることがあります。
恒等式だとわかったときに我々の取れる態度は基本2つです。
- 数値代入
どんな値でも成り立つわけなので、特別な値を入れても成り立つよねということを使います。「僕はなんでも食べれるよ」と嘯く少年に「じゃあこの○○○食べてみろよ」という行為です(○に何が入るかはご想像におまかせします)。
- 係数比較
どんな値でも成り立つということは、式変形の計算を行っただけとも解釈できます。ということは、同じ形にすれば全く同じ式になるので、係数だって当然同じという見方にたったものです。
それぞれメリット・デメリットがあります。
大きなところで言えば、数値代入は特別な値を使っているので、証明問題のようなどんな値でも成り立つことには使えませんが、特別な値を好きに選べるので、計算は楽になりやすいです。
一方、係数比較は同じ形にする手間はありますが、形が似ていれば手っ取り早かったり、すべての値で成立することがそのまま保たれて式変形するので証明に使いやすかったりします。
そして、この問題で今問われているアを含む式は恒等式です。方程式ならば立式する問題になりますが、立式する為の情報は何もありません。
恒等式という観点から、冒頭のダラダラと計算したり、一塊とみて展開といった式を展開する行為は係数比較をしていることを意味しています。しかし、数値代入を無視して係数比較を採択する理由は何でしょうか。計算が楽になる方を選ぶべきで、変数である$n$、$x$に好きな値を入れる数値代入の方が明らかに楽です。
これをセンターテクと銘打つ人もいますが、恒等式だと認識していれば当然の行為です。
さてアを求めるために、$n$、$x$に何を入れますか。何でもいいのですが、$n$に0をいれるとアが消滅してしまうので、$n$にはそれ以外の簡単な数字で1を入れます。$x$は5をいれるとカッコが消えていい感じです。
このことから、
$$ (1+5)(1+5-5)=5\times (5-5)+1^{2}+ア \times 1 $$
を計算して、ア=5と求まります。
同様の値ですすめると、$X=5\times(5-5)=0$となってしまい、イウエが消滅するので改めて変数を選び直す必要があります。
つまり、$X=x(5-x)$が0にならずに計算が楽になる値を考えます。
左辺の$A$は0になっても全く問題ないので、$x=-1,-2,6,7$あたりがいい感じです。イとウエで変数が2つあるので、このうち2つ値を使います。$x=-1,-2$で考えると、それぞれ$X=-6,-14$となります。このことから
$$ 0=-6 \times (-6+イ)(-6+ウエ) $$ $$ 0=-14 \times (-14+イ)(-14+ウエ) $$
となります。これを式変形して
$$ (イ-6)(ウエ-6)=0 $$ $$ (イ-14)(ウエ-14)=0 $$
とします。間違っても、これを連立方程式として計算してはいけません。
積の形が0となっていることをたまたま起きたこととして無視するのはモッタイナイです。掛け算の値が0は、左辺の積のどちらかが0ということです。
上の式は6、下の式は14が変数に入ると0になります。一文字一桁ですから、組み合わせは $$ イ=6 , ウ=14 $$ しかありません。
ちなみにこれは問題の誘導に乗っていないので、そこを意識してみます。「したがって」という表現から$n$を使った式 $$ (x+n)(n+5-x)=X+n^{2}+5n $$ を道具として使用せよと読めるので、これと$A$の式を見比べてみます。左辺の積の式の$n$の値を0、1、2といれると$A$の形が見えてきます。それぞれを掛け合わせるとAになるので、右辺にも同じ態度を取ると $$ (X+0^{2}+5\times0)(X+1^{2}+5\times 1)(X+2^{2}+5\times 2)=X(X+6)(X+14) $$ となって、値が求まります。
最後に$x$が指定されたときの$X$、$A$を求めます。 まさかそれぞれに代入することはしません。
いくつか解き方はあるのですが、この問題の特殊性を使ってまずは解いてみます。
Aの解答の形を見ると2の累乗の形をしていて、$X$は一桁です。ということは
$$ A=X(X+6)(X+14) $$
の形から、$X$、$X+6$、$X+14$も2の累乗で、特に$X$が2の累乗になっていることから、$X$に一桁の2の累乗2、4、8を代入してみると、$X=2$のときだけ$X+6$と$X+14$も2の累乗になります。
ゆえに$X=2$を代入して
$$ A=2\times 8 \times 16=2 \times 2^{3} \times 2^{4}=2^{8} $$
と求まります。
が、この方法は、答えの形を利用することで、なんと$x$を使っていません。そこで、一応与えられた$x$の値を使ったものも考えておきます。
$$ x=\frac{5+\sqrt{17}}{2} $$
は解の公式を使ったような形をしています。解の公式を求めるときの逆演算を行うと
$$ 2x=5+\sqrt{17} \Leftrightarrow 2x-5=\sqrt{17} $$ $$ \Rightarrow (2x-5)^{2}=17 \Leftrightarrow x^{2}-5x+2=0 $$ $$ \therefore x(x-5)=-2 \Leftrightarrow x(5-x)=2 $$
となることから$X=2$です。こんな式変形わかんねーよと言われそうですが、$x$から$X$のカタチを目指すわけです。$X$が二次式なので、解の公式の逆をたどることで二次式を作り出せます。勿論、展開したカタチである$5x-x^{2}$を目指してもOKです。
$A$についてはさっきと同じです。
問題文をちゃんと読んで、何を問われているのか/何が使えるかを意識できれば近道できる問題でした。
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