ちょいと間が空きました。待ってた人いたらごめんなさい。前回の続きです。
$A$、$B$、$C$の定義を確認しておくと以下の通りです。
$A=\left\{ x\mid x \in U かつ xは20の約数 \right\}$
$B=\left\{ x\mid x \in U かつ xは3の倍数 \right\}$
$C=\left\{ x\mid x \in U かつ xは偶数 \right\}$
さて(c)から考えていきます。 $$ ( A \cup C ) \cap B=\left\{ 6,12,18 \right\} $$
左辺は集合の文字式であるのに対し、右辺は具体的な数値で集合が表されています。ゆえに一方をもう一方の表現に合わせることで両辺が一致しているかどうかの判定ができます。
右辺に合わせるとすると、左辺の要素を書き並べることになります。通常の演算のようにカッコの中から順番に$A$の要素と$C$の要素を重複なく書き並べ、それから$B$の要素を書き並べて共通するものをピックアップしていくと目指すカタチにできます。最後の$\cap B$のところは、かつ3の倍数と読めば$A \cup C$の具体化されたものから3の倍数だけを拾えばいいことがわかります。
ちなみに逆に左辺に合わせるとなると難儀です。「全部3の倍数だから$\cap C$があって‥」と右辺から組み立てられた人がいたとして、その人は結局右辺に合わせる行為をしていることに気づくはずです。
ここで少し一般論。集合や論理を扱うときによくかつとかまたはという表現が出てきます。互いに否定表現だとか、かつが共通部分でまたはは合わせたものとかご存知だと思いますが、解くという観点で意識したいのは、かつは範囲を狭めるもの、またはは範囲を広げるものということです。そして、モノゴトは一般には狭い範囲から考えるほうが易しいことが多いです。人類は世界平和を実現することは未だ成し得ていませんが、家族平和であれば実現できている家庭はあると思います。
そういった目で問題に戻ると、$\cap B$という範囲を狭める行為が最後になっています。集合演算にも分配則は成り立つという知識を道具としてちゃんと持っていれば、 $$ ( A \cup C ) \cap B=(A \cap B) \cup (C \cap B) $$ とすると、先にBの力で$A$、$C$を弱めてからまたはを考えられて易しくなります。
$A \cap B$は20と3が互いに素なので、空集合です。ゆえに$A \cap B$からは拾い上げるべき要素はありません。
$C \cap B$は偶数かつ3の倍数です。20以下の自然数だと、$\left\{ 6,12,18 \right\}$となり右辺と一致します。よって正です。
次に(d)を考えます。 今度は両辺集合の文字式なので、ざっくりいうと式変形ができるかどうかという観点で考えます。 左から攻めるか右から攻めるかあるけど、どっちにしてもやることは変わりません。さっきもやった分配則を使って同じ形にならないかなと期待してみます。
$$ ( \bar{A} \cap C) \cup B=(\bar{A} \cup B) \cap (C \cup B) $$ すると後ろの$\cap (C \cup B)$は目指している右辺にあるものなので、つまり
$$ \bar{A} \cup B=\bar{A} $$
が成り立つと正、ダメだと誤となります。といってもこの両辺の違いは$ \cup B$があるか否かなので、
$$ \bar{A} \supseteqq B $$
となっているかどうかを確認します。20以下の3の倍数すべてが20の約数でなければ成り立ちますが、先程と同様3がそもそも20を割れないので、3の倍数が20が割れることはありません。ゆえに成り立っているとわかったので、正となります。
続いて(2)。
まずは成り立つ命題を考えます。
$qまたはr \Rightarrow p$が成り立つのか$p \Rightarrow qまたはr$が成り立つかで必要十分条件の呼び名が決まります。
それゆえそれぞれの不等式が示す集合の関係を具体的にみていくわけですが、世の常套手段は数直線を書いて考えよです。
それに全く異論はありませんが、今は空前の暗算ブームですから(え?!)丁寧に紙に線を引かなくても解けないか考えてみます。
$p: |x-2|>2$
は定性的な側面から考えると(つまり数式を日本語に翻訳してみると)、数直線上2の点からの距離(長さ)が2より大きいことを意味しています。正と負の方向にそれぞれ長さが2以上のところは、4より大きい範囲と0より小さい範囲です。この4より大きい範囲と0より小さい範囲というのを今度は数式に翻訳すると、
$x>4$
$x<0$
です。これはそのまま$r$と$q$です。この流れを逆にたどって、$r$または$q$から$p$となります。つまり$p$と$r$または$q$は同じもので、必要十分条件であることがわかります。
最後に$r$と$s$の関係を考えます。これって、根号をちゃんと外せますかという中学数学な問題です。
$$ \sqrt{x^{2}}=|x| $$
です。$\sqrt{x^{2}}=x$ではありません。文字変数を考えるときは、その変域を常にセットで考えることは重要というか常識です。この問題で$x>0$なんて条件はないので、$x$に負の数を入れることが出来ます。例えば左辺に$-2$を代入して計算が出来ますが、その計算結果は$-2$ではありません。根号で与えられた値は正の値です。ゆえにそのことが保たれるような式変形が必要なわけです。
$\sqrt{x^{2}}=|x|$となることがわかれば、
$r: x>4$
$s: |x|>4$
の比較です。$s$は負の数を許容している分だけ$r$より大きい集合です。つまり
$r \Rightarrow s$
は成り立ちますが、
$s \Rightarrow r$
は成り立ちません。よって真である命題$r \Rightarrow s$から、$s$は$r$である為の必要条件と呼ぶことだけできます。
今回はここまで。
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