前回記事からすごーーーーく間が空いてしまいました。すみません。その間、ワールドカップで惜しくも日本は敗退し、僕はスマホをGalaxy Note8にしました。ふとした隙間に手計算ができるのはなんて数学向き端末だと思う今日この頃です。
今回は、いわゆる整数問題です。整数問題って難しいよねって言われがちだけど、大学受験レベルではジャンルとして突出してはいません。
印象としては、今回のものを含めパターン化されたものが多い分野です。知ってれば簡単に解ける問題=趣味で解いてる立場ではつまらない問題だったりするので、個人的にはこの問題特有の目線はないかなと考えることもしばしばです(光明が差すのは稀ですが)。
今回は王道なアプローチで考えてみます。
(1) まずは約数の個数から。これって去年もありましたね。ここまで同じ問題を連続して出題するなんて、ちゃんと過去問解いてるかというメッセージにも受け取れます。
でも、逆に言うと数学が苦手な人でも去年の問題を解いていればわかるわけで、この問題は過去問を解いているかどうかという努力を数学的素養の判断より先行させるのってどうなの?って思ったり思わなかったり。
144を素因数分解するとと書いてあるので、素直に素因数分解します。頑張って割り算していけばいいわけですが、
$
144=12^{2}
$
ってことを覚えてる人も少なくないハズ。で、12の素因数分解なんて暗算でできるわけで、
$
144=(2^{2} \cdot 3)^{2}=2^{4} \cdot 3^{2}
$
と計算した方が楽な気がします。
(2) 続いて、知っている人はディオファントス型とかの名称でご存知の問題。特に問題のような形をべズー方程式と呼ぶことまで知っている人もいるかもしれません。
でも。ここではあえて知らないふりをしてみたいと思います。知ってれば解けるはそりゃそうでしょって感じでおもしろくありません。教科書にユークリッドの互除法の使い方なんてだいたい説明してあるだろうし、ほんとは知ってるから解けるという状況だとは思います。
さて改めて式を観察してみます。
$ 144x-7y=1 $
この式はひとつの式で2つの文字があるので、一意に答えは求まりません。たくさんあるであろう解の中で、$x$が最小となるものを聞いてきてるわけです。
$x$の答案の形をみる一桁で、一番小さな値と言われているので、その気になれば代入していくのもアリです。1から代入して、$y$が整数となるような値を見つければOKです。 これで僕らには何も閃かなかったときの為の保険ができたので少し余裕があります。代入以外の道を少しのぞいてみることにします。
よくよく式をみてみると144という数字があります。これは前問で素因数分解したり、約数の個数を数えた数です。偶然の2度の登場なのでしょうか。こんなときは何かあるよねって考えてみます。とりあえず同じ態度をあてはめます。
$ 144x-7y=2^{4} \cdot 3^{2} x-7y=1 $
んー。あてはめてみたところで何かがわかる気がしません。前問で持ってる残りの情報は約数の個数です。って言われてもな感じです。ここでやってみるアプローチとしては、対称性というか平等性というか、登場人物をちゃんと差別なくみれてるかという確認です。つまり144と同じ態度を同じ立ち位置の係数である7でも考えてみるわけです。で、考えてみた瞬間、あ、素数かとなります。すると144と7を素因数分解して気付く事実として、これらの数は互いに素なのねってことがあります。
ここで、互いに素ってなんだっけって思い出してみます。共通の約数(公約数)を1以外に持たない数ということでした。今、右辺に1がいます。これは偶然か必然か考えずとも、僕らにはそこを手がかりにするしか手がなさそうです。
でも、共通の約数(公約数)が1ということをどうやって定量化すればいいのか。ここで、そもそも公約数に関する知識は定義以外にはユークリッドの互除法しかなかったなんてことになるはずです。
ユークリッドの互除法とはなんだったか思い出してみると、最大公約数を求める手続きでした。大きい数など即座に最大公約数がわからないようなときに、2数の最大公約数は割り算したときにその割る数と余りの最大公約数に等しいというアレです。
このユークリッドの互除法、感覚的になんで成り立つのか今一つ理解できないという人もいると思います。図形的に考えるアプローチもありますが、ここは証明にも繋がるところでそもそも論のところに少し触れておくことにします。
小学生のときに僕らは割り算を
$
27 \div 6=4 \cdots 3
$
といった形で習います。でも中学生、高校生になるにつれて『$\cdots$』て四則演算記号じゃないし扱いづらいよねってことで、
$
27=4 \times 6 + 3
$
という表現を使うようになります。しかし、多くの人が割り算の式をイメージするときに上の『$\cdots$』がある式を思い浮かべてしまうと思います。数学では定量的な表現にして計算するわけですから、多くの場面で下の『$\cdots$』がない形の方が有益です。ゆえに、割り算とその答の商という言葉がでてきたときは下の式をまず思い浮かべるようにするといいことが多いです。
で、ユークリッドの互除法を考えてみます。2数の最大公約数は割り算したときにその割る数と余りの最大公約数に等しいわけですが、上の例だと27と6の最大公約数は6と3の公約数に等しいということで、3とわかります。でもそれって当たり前で、左辺が割りきれるなら、右辺だって割りきれるはずで、余りもその数を約数として持ってるよねということです。
具体的に計算してみると
$
27=4 \times 6 +3
$
$
6=2 \times 3 +0
$
となります。つまり、27と6の最大公約数は6と3の最大公約数に等しいってのが上の式からわかることで、6は3で割りきれるから3が最大公約数になるというのが下の式が示しています。
今回の問題ではこの公約数が1というところを使いたいわけです。ということで、144と7で計算してみます。
$
144=20 \times 7 + 4
$
$
7=1 \times 4 + 3
$
$
4=1 \times 3 + 1
$
この最後の式で、3と1の最大公約数が着地点で1とわかります。互いに素であることはわかっていたので自明な結論です。互いに素なら公約数は1なのでこの手続きの最後は必ず1になります。
さて、1があって144と7が絡む式群が手に入りました。これらの式群はもちろん手続きの通り繋がっていて、最初の式に144と7、最後の式に1があります。
どちらかに寄せればひとつの式になるのですが、最初の式に下の式を代入していくと残したい数字が消えてしまいます。ここは最後の式から1を保ちながら変形を試みます。
$ 1=4-1\times 3 $
ここから真ん中の式を当てはめるわけですが、真ん中の式の余りの値3を消す形で代入します。なぜかと問われたならば、僕らは同じ行為をもう一度やって最初の式にたどり着くわけです。で、最初の式の形をみると、144と7は残したいわけで、余りが1じゃないのが邪魔なんです。なので下から見たときに上の余りを消していくという態度で臨みます。
$ 1=4-1\times 3=4-1\times (7-1 \times 4)=2 \times 4-1\times 7 $
ここでもちろん最後の掛け算の計算をしてしまうのは野暮です。ページ数を表すときにみかける24/320(320ページ中24ページ)の分数を約分するくらい野暮です。
かといって、代入した直後の形で留め置くのもこれまた野暮です。ユークリッドの互除法の観点から、主役は上から順に144と7、7と4、4と3なわけです。これらの数の公約数を維持する形でそれぞれの式において割られる数から余りの数へ引き継ぎが行われていると捉えられます。引き継がれた余りの数から逆に割られる数に戻していく作業をしているわけですから、それぞれの主役の値で整理するという行為は当然の作業です。その結果144と7で整理されたゴールを目指しているわけです。
ということで、もう一段階作業します。
$
1=2 \times 4-1\times 7=2 \times (144-20\times 7)-1\times 7
$
$
=2\times 144-41\times 7
$
これで元の式と比較すると
$
x=2, y=41
$
とわかります。この$x$が最小であることは$x=1$のとき、$y$が整数でないことを確認すればOKです。やっといてください。$x=1$は成り立たないことが簡単にわかります。…と求まりはしたのですが、センターの場合解答欄から判断してさっさと代入して見つけた方がやはり手っ取り早いです。
で、最後に一般解です。いまこの問題を通して得た武器を使って式を眺めてみても、$x$と$y$の一般解を求める道のりは見えづらいのではないでしょうか。
数学に限らず物事に悩んだとき、僕らがとれるアプローチは実はそんなに多彩じゃありません。具体的に考えたり、抽象化したり。分割したり、全体の一部とみなしたり。このくらいしかないんじゃないかと思います。
この問題において前問以上に具体的に考えても得られるものはなさそうです。抽象化して、整数問題としてカテコライズしたときにそもそもどんな策がとれるのかをみてみます。問題をカテゴライズするって普段何気なくしてると思いますが、これだって問題を解くひとつの施策になります。
整数問題とは当然整数の特徴を使って解く問題のことです。じゃ整数の特徴って?となりますが、シンプルに値がとびとびということです。ここから整数関連で学ぶ3つの重要な事実がちゃんと結びつきます。
まずは、割り算の話を上で述べましたが、余りの存在です。一般に四則演算において、割り算だけが答えが整数でなくなってしまう為、そこに置き土産的な特徴が出てきます。
$
27 \div 6=4 \cdots 3
$
は整数で考えることをやめれば
$
27 \div 6=\dfrac{9}{2}
$
でいいわけです。整数の世界で表現しようとするからこそ、3残ってしまう=3余るという概念が登場するわけです。
この考え方から特に余りが0のものに着目すると、整数は約数をもつという事実が出てきます。
$
27 \div 3=9
$
ですが、27は3を約数に持つということを意味しています。これは割り算において、約数で割り算をしたときだけ答えが整数の世界にとどまる、という見方もできます。言い方をかえると、割り算をした結果、整数であり続けるのは約数だけということです。
最後は方程式じゃなくて、不等式でも値が求まりうるということ。これもとびとびだからこその事実です。例えば
$
3.5<x<4.2
$
という不等式において、$x$が実数だったら答えは無数にあります。これが、$x$は整数だよとわかった瞬間に$x=4$だとわかります。これは整数は数直線上隙間があるので、区間を限定するとそこに含まれる整数はおのずと限定されてくるわけです。
この整数問題ならではの3つの武器をもって問題に立ち戻ってみます。使いどころの判断としては、条件に不等式そのものや、何らか評価できるようなものがなければ割り算の世界です。
$ 144x-7y=1 $
ここで、またも少し一般論の話ですが、形で表現せずに1文字置いただけのような変数は宣言次第で何とでもなります。どういうことかというと、$x$は整数ですといったところで、$x$という文字が自然と自発的に整数の性質を計算上持ってくれるなんてことはありません。整数とおいたこちら側がちゃんと文字を整数と信じ込んで計算をする必要があります。でも$x=2k+1$($k$は整数)となってたら、$x$は奇数だと、形がその特徴を表現することで取り扱うことができます。何が言いたいかというと、$144x-7y=1$の$x$と$y$が整数と宣言するだけだと整数の特徴を使うことができません。整数なんだよというお墨付きを形で表現することで与えるわけです。
しかし。例えばこの式を
$
x=\dfrac{1+7y}{144}
$
変形したとします。右辺は分数だけど実は整数だよという態度で、144は$1+7y$の約数と考えてもこれ以上先に進めそうにありません。和の形が約数ってのが厄介なわけで、分子が積の形になってればありがたいわけです。なぜなら、分母が分子の約数とはつまり分子の因数に分母がいるということだからです。因数ってのは、改めて確認しておくと積の要素となる数のことです。和の式だと因数になってることの処理が困難です。
つまり、分子に1がなければよかったのにということです。この1が邪魔なんです。邪魔なら消せないか検討してみます。1が邪魔で消したいなら、1が入っている式で消すということが一番短絡的な手段です。1が入っている式ってなかったっけなと振り返ると、そいや上のほうで似たようなこと考えてたなと思い出します。 $ 1=2\times 144-41\times 7 $
これですね。これ使えば1消せるじゃんて感じです。
$ 144x-7y=1=2\times 144-41\times 7 $
これを整理すると
$ (2-x )\times 144 = (41-y)\times 7 $
となります。いやいや『文字=』の形にするんじゃないんかいとツッコミが聞こえてきそうです。それでも全然OKなんですが、折角両辺が似た形になっています。それを保ったまま変形しました。かつ、1がなくなっているので、左辺と右辺におくと、積の約数比べができそうと考えたわけです。左辺も右辺も整数で、両方形で表現されています。一文字ずつ考えるより一石二鳥かなといったところです。
シンプルなところから、右辺の7をもって左辺を考えます。7がどこかに因数としているよねということです。144の中には7はいません。それは素因数分解した結果が示しています。ということは、$2-x $が7の倍数ということです。つまり
$ 2-x=7k $
です。これを変形して、
$ x= -7k+2 $
となります。同様に左辺の144を持って右辺に行くと、$41-y$の因数に144がいるハズとなります。ゆえに
$
41-y=144k
$
$
y=-144k+41
$
あれ、答えの形に合わないと思うかもしれません。大丈夫。このマイナス(ー)どうにかならないかなと考えてみると、$k$は整数だから正の数でも負の数でも任意の数で成り立つわけです。ということは、
$
x= 7k+2
$
$
y=144k+41
$
としても結局同じ数を表せることがわかります。
…と、こんな感じで解いてきましたが、不定方程式ってこうやって一般解求めるのよって覚えてしまってる人も少なくないと思います。で、そういう姿勢の人に何故そう解くのかを考えよといいがちな人が多いのも事実です。
どちらの姿勢もアリだとは思いますが、ここでどんな武器をどんな使い方をしたのかということを抑えておくことは有効ですし、それをもっと普段の生活の思考回路に結び付くようなところにまで考えが及ぶと僕は楽しいなって思います。
今回はここまで。
随分と更新間隔が空いてしまったので、次はいつもの間隔でいけるよう頑張ります。とはいえ、ずいぶんな文字数になったなぁ。