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【問題解説】センター試験平成30年度本試験 IA 第3問 (2)

ワールドカップにドはまりする今日この頃です。初戦突破、日本最高!

こんなサッカーの季節に、サッカーと数学を結びつける面白い本を発見しましたサッカーマティクス 数学が解明する強豪チーム「勝利の方程式」 )。副音声でこういうことを話す解説者がいたらもっと楽しめるのになぁ。完読して覚えてたら書評記事アップします。

さて、今回は確率の残りです。

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(3)
定義をしっかり覚えている人には、独立かどうかを判定させるのねって問題です。

例えば事象$A$と$B$が独立であることを考えるときに、独立の定義式を満たしていると解釈する場合と、互いの事象が互いに影響を及ぼさないような関係ないものとして定性的な日本語の文章で解釈する場合があります。もちろん、前者の方が厳密性に耐える場面が多いですが、後者は感覚的な理解を助けてくれます。前者をベースに、ときに後者に思いを巡らせてみるというのが無難な態度だと思います。

ちなみに定義式というのは、

事象$A$、$B$に対し
$ P(A \cap B)=P(A) \cdot P(B) $
が成立するとき独立であるという

ってていう定義の中に登場する
$ P(A \cap B)=P(A) \cdot P(B) $
のことです。この式が成り立っていると$A$と$B$は関係ないよねって思いやすいです

で、問題に戻ると$A$と$B$(ついでに$C$も)ってなんだっけと聞こえてきそうなので、ここで再掲しておきます。

A:大きいさいころについて、4の目がでる
B:2個のさいころの出た目の和が7である
C:2個のさいころの出た目の和が9である

まずはAとBの独立からみていきます。左右の値を比較するわけですから、それぞれ具体的に値を計算してみます。 左辺から計算してみると、前回同様(大きいさいころの目, 小さいさいころの目)と記すルールとして、

$ A \cap B=\{ ( 4, 3 ) \} $

であることから(Aのおかげで4が固定されてるので、和が7となるような小さいさいころの目は当然1パターン)、

$ P(A \cap B)=\dfrac{1}{36} $

です。$ A \cap B=\{ ( 4, 3 ) \}$に悩んだ人は少ないと思いますが、こういう問題で肝心なのはふたつのさいころの目を(大きいさいころの目, 小さいさいころの目)と表すことです。前回述べた通り、事象を座標平面上に展開できるようなスタイルにしておくことは、シンプルに数えるのに対応できるのはもちろん、複雑になっても効率的に数える術を格子点問題的アプローチで検討ができるので強力です。

で、今度は右辺を計算してみると、$P(A)$と$P(B)$はそれぞれ前回計算しているのでそれを用いて、

$ P(A) \cdot P(B)=\dfrac{1}{6} \cdot \dfrac{1}{6}=\dfrac{1}{36} $

となって

$ P(A \cap B)=P(A) \cdot P(B) $

が成立することがわかります。

次に$P(A \cap C)$と$P(A) \cdot P(C)$の関係ですが、これらはすべて前回求めた値なので、振り返ってみると

左辺$=P(A \cap C)=\dfrac{1}{36}$

右辺$=P(A) \cdot P(C)=\dfrac{1}{6} \cdot \dfrac{1}{9}=\dfrac{1}{54}$

となって一致しない(分数は分母が大きい値が当然小さいので、右辺が小さい)ことがわかります。AとBは独立なのにAとCは独立じゃないなんて、感覚的に考えると不思議な話です。

(4)
2個ペアを2回投げたとき、1回目と2回目は独立です。36通りの中から2回選択することになるわけです。2回目に36通りから選択するときにどれかを選びやすくなるということは勿論ありません。(1回目の値, 2回目の値)と書くことにすれば、定義式を満たすことも暗算レベルで容易にわかります。

ということで問題を考えてみると、1回目に$A \cap B$、2回目に$\overline{A} \cap C$となる事象の確率は、独立であることからそれぞれの確率の積で求まります。で、2回目の確率は初登場なので、まずどんな事象なのかから考えてみると、大きなさいころの目が4ではなくて、和が9となるような確率です。前回列挙したCの目のパターンを再掲すると
(3, 6)
(4, 5)
(5, 4)
(6, 3)
です。これのうち(4, 5)がAに属するので、これ以外の目が出る確率なわけで、
$P(\overline{A} \cap C)=\dfrac{3}{36}=\dfrac{1}{12}$
となります。

ゆえに
$ P(A \cap B) \cdot P(\overline{A} \cap C) =\dfrac{1}{36} \cdot \dfrac{1}{12}=\dfrac{1}{432} $
となります。ちなみに分母の計算は、$36 \times 12= 36 \times (10+2)=360+72= 360+40+32=432$と考えれば暗算です。地味にこういうのって計算スピードにはねるので、大切です。

最後にA、B、Cがそれぞれ1回出る確率を求めます。難しいと思うかもですが、そう思うより前にまず具体的にどういうパターンがあるのかを考えるようにします。全パターンを洗い出せればこういう確率の問題は解けるわけで、わかんないと思ったら全パターン書きだす覚悟をまずはもつべきです。で、書き出す中でパターンに効率性を見出せばいんです。

かつ。センターなんて特に難しそうなものには誘導がつきやすいわけです。誘導に乗れてないから難しく感じるのだと思ったとき、振り返ってヒントを探してみる価値があります。ヒントとなるのはますば使ってない道具です。

使ってない道具とは、多くの場合使えていない道具であって、ときにそれは何故かただ計算させられたものだったりすることもあります。

この問題でそういった存在のものは明らかに$P(A \cap B) \cdot P(\overline{A} \cap C)$です。求めよといわれたのでとりあえず計算しましたが、これは何だったのか。ヒントなんじゃないかと考えてみます。

これまで独立事象をテーマに考えてるわけだし、特にこの問ではさいころ二組を2回投げる独立試行だったりするわけです。じゃ1回目$A \cap B$で2回目$\overline{A} \cap C$と考えてみます。この問のA、B、Cが1回ずつという条件を意識してみると、あぁこれは具体的なパターンの一つかとわかります。

じゃ他のパターンは?ということで、2回投げて3種類がすべて出るということから、どれかふたつは重複して1回目か2回目に現れます。どの組み合わせで重複するかというと、AとBか、AとCです。BとCは同時に成り立ちません。ということは、

①: ($ A \cap B $, $ \overline{A} \cap C $)
②: ($ \overline{A} \cap C $, $ A \cap B $)
③: ($ A \cap C $, $ \overline{A} \cap B $)
④: ($ \overline{A} \cap B $, $ A \cap C $)

で全種類です。で、さっきのはこのうちの一つだったということです。

独立試行なので①と②、③と④はかけ算の順序が異なるだけで同じ計算式になります。かつ先ほどの$ P( \overline{A} \cap C) $ と同様の考え方で
$ P(\overline{A} \cap C) =\dfrac{5}{36} $
とわかるので、これらのことから、

①:
$P(A \cap B) \cdot P(\overline{A} \cap C) =\dfrac{1}{432}$
②:
$P(\overline{A} \cap C) \cdot P(A \cap B) =\dfrac{1}{432}$
③:
$P(A \cap C) \cdot P(\overline{A} \cap B) = \dfrac{1}{36} \cdot \dfrac{5}{36}=\dfrac{5}{36^{2} } $
④:
$P(\overline{A} \cap B) \cdot P(A \cap C) = \dfrac{5}{36} \cdot \dfrac{1}{36}=\dfrac{5}{36^{2} } $

とわかります。

ゆえに求める確率は
$ \dfrac{1}{432 } \times 2 +\dfrac{5}{36^{2} } \times 2 = \dfrac{1}{216} + \dfrac{5 \times 2}{2^{4} \cdot 3^{4} }=\dfrac{1}{2^{3} \cdot 3^{3} } + \dfrac{5}{2^{3} \cdot 3^{4} } $
$ =\dfrac{3 + 5}{2^{3} \cdot 3^{4} }=\dfrac{1}{3^{4} } $
$ =\dfrac{1}{81} $
となります。

計算が面倒だなと思うタイミングが幾つかあったかと思いますが、手の運動を競うのが目的ではないのでひたすら懸命に計算をするのはスマートではありません

約分できると分数計算は楽になります。そして、大きな数の通分はしんどいです。ということで、約分や通分がしやすいようにしておけばいいわけです。すべての計算をきっちりしておくことはこれらのことを阻害します。

具体的にどうするかというと、素因数分解された形にしておくことです。例えば、途中出てきた$36^{2}$を計算するのは面倒ですが、それを乗り越えて1296と計算したとしても、答えの形は二桁なので明らかに約分する将来が見えています。そして、解答の中で場合分けもしているので、通分もしなきゃです。だったら、$36^{2}=\{ (3 \times 2 )^{2} \}\ ^{2} =3^{4} \times 2^{4} $としておいた方が楽なわけです。

分数計算が面倒だなとおもったら、目的は何なのかということに思いを巡らせ、逆に分解してみてください。

時間が比較的短い中で解くという観点からは、センター対策って意外にこんなところにあるのかもしれません。