本をだらだら読むのは僕の趣味の一つだが、ジャンルとしてはやっぱり数学系に手が伸びがちだ。でも残念なことに、どんなに面白いと思っている本でも一年もたてば結構な部分を忘れていたりする。で、どんな内容だっけと再度手に取って読んでみる。一通り読んで、ああなるほどと本を置く。
こんな習慣を何年も続けて、ようやく最近時間がもったいないなと思うようになった。書評としてブログに残しておけば、記事を読めばわざわざ本自体を読み返さなくてもあらかた思い出せるのではないか。そして、ついでに僕と同じような感性の人に面白い本を紹介できればほんのわずかながら著者への恩返しになるかななんて思ったりして、そんな動機で【書評】のジャンルを設けてみた。
とはいえ、律儀に面白かった本全部に書評を残すほど暇でもないので、これはと思ったものをそれなりのタイミングで更新していきたい。
と決意表明はこれくらいにして、第一弾はこれ。
- 作者: アーサー・ベンジャミン,マイケル・シェルマー
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2017/11/11
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
もともとはTEDで知って、でもそのときはフーンくらいにしか思っていなかったんだけど、本がとても素晴らしかった。
暗算能力が高い人って、日本だとそろばんとかフラッシュ暗算とか公○式とかの効能が有名すぎて、特殊能力のようにみられがちではないだろうか。
けしてけしてそういった暗算能力の育成方法を否定するものではないし、その辺の仕組みを知っているわけでもないのだが、古臭いスポーツ的訓練の作用なのかなと思ったときに、非科学的に単に根性で身に着けるというスタンスは数学じゃないと考えていたし、物事の抽象化はいつか具体化するためのものと信じていたから中学数学で習う式の展開や因数分解の世の中での扱いの放置具合が学生時代から気になっていた。
とはいえ、真正面からこの分野に取り組んだことはなかったから、ぼんやりと思いを持ち続けた中でこの本と出会った。素早く解くという行為を鮮やかに、ロジカルに説明をしている様は、これこそがマジックだと思えた。
マジックは、見ているだれもがタネはあると知っているけど、その経緯は伏せられて結論に驚くものだ。ポイントは、だれもがタネの存在は認めているところにある。タネなんてなくて、これが超能力だと言われてしまうと、僕の中では評価を下げる。やはり、すごいマジックを見せてくれたマジシャンが、これにはちゃんとタネがあると認めることこそが魅力なのだ。
力技ではなく、天才のひらめきでもない、確固たる手法で手早く計算をする手段が惜しげもなく紹介されている。計算問題は腕力で解くような古典的なスポーツではなく、適した方法を駆使して求める現代スポーツのようなものとわかるだろう。こんな本に中学時代に出会いたかった。