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破産する確率を考えてみる。

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今回は、有名問題「破産の確率」について。

まずは、問題を見てみよう。直近の問題で探していたら2018年の早稲田大学の問題の中にあった(別大学でもっと新しい年度があるかもだけど)。

 

問題

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この問題、さいころのルールはそのままに、数直線上の値に「万円」という単位をつければギャンブルな問題に様変わりする。1~4だと1万円もらえて、5,6ならば一万円失う、と捉えるわけだ。

 

そうするとこの問題は、このルールにおいて5万円勝って終わる確率を求める問題、と解釈できる。

 

「点5に到達して終了」

の部分は、実はどの点であってもいいので、所持金をすべて失ったときの設定をもって、この種の問題は「破産確率の問題」と呼ばれる。

 

 

もちろんさいころでなくても、確率が求まるようなランダムな行為で移動が決まるのであればいいわけで、目標金額が設定できれば、そこに到達する確率を求めることができて、旅行でカジノに立ち寄った時に、冷静な判断に寄与するかもしれない。

 

ということで、実際どう解くのかを考えてみよう。

 

破産確率の問題を解いたことがない人は、初めの第一手に迷うかもしれない。

 

数学問題を解く

数学問題を解く

 

という似て非なる表現において、最大の違いは「一般化」にあると思う。数学とは、構造の科学であり、具体的な事象を解決するために使うには、抽象⇔具体の橋渡しが必要になる。それが、数学問題を解くということだ。数学問題を解く場合においてはその橋渡しはケースバイケースとなる。

 

では、今回の問題はどっち?ってことになるけど、「万円」と置き換えるだけで実際の話に置き換わるものであることから、数学問題を解くというスタンスで捉えてみる。

 

アプローチは、以下の通り。

  1. 点1から出発し→点$n$から出発し、と文字に置く
  2. さいころの目という離散量(とびとびの値)に対し、結果も数直線上の整数値を移動することから、点5に到達する確率は、離散量を変数にもつ。離散量を変数に持つ関数(確率)→数列で解釈する。
  3. さいころで決められた動くルール(目の値で、+1または-1)は、前後の関係だから、漸化式を考えてみる。

 

ここでポイントは、どうやって漸化式を組み立てるのか、だ。

$a_{n+1}=$前後の項との関係式

を具体的に立式したいわけだけど、そもそも$a_{n}$が何を表すのか定義しておく必要がある。

 

$a_{n}$:点$n$を出発し、点5にたどり着く確率

$a_{n}$:点1を出発し、点$n$にたどり着く確率

 

と、一見すると、スタートを変数にするかゴールを変数にするかにパターンある気がするけど、さいころを振りながらゴールを目指す過程を考えると毎回起点は変わるものの、ゴールは固定なわけだから、前者の定義が良いことがわかる。

 

$a_{n}$:点$n$を出発し、点5にたどり着く確率

 

これを使って改めて

$a_{n+1}=$前後の項との関係式

を考える。 

 

定義の中でスタート地点を変数としたので、そこからの前後関係を考える。

スタート地点$n+1$からは、+1あるいは-1動くわけで、例えば+1動いた場合を考える。

 

+1動いたということは、さいころの目が1~4だったということだ。そして点$n+1$から点5を目指すことになる。これは、$a_{n+2}$となる。

 

一方、-1動いたということは、さいころの目が5か6だったということだ。そして点$n$から点5を目指すことになる。これは、$a_{n}$となる。

 

このことから、

$a_{n+1}=\dfrac{4}{6} \times a_{n+2} + \dfrac{2}{6} \times a_{n} $

 と漸化式を組み立てることができる。

 

あとはこれを解いて$a_{1}$を求めればいい。

 

とはいえ、この漸化式。一般項を求めるのは少々難しい。とはいえ、漸化式なんてどうせ落とし込むところは等比数列しかない。だって、等比数列か等差数列じゃないと漸化式と一般項の変換は方法を知らないわけで、係数がある時点で等比数列を使うしかない。

 

つまり、漸化式を

$a_{n+2} - ◇a_{n+1} =△(a_{n+1} - ◇a_{n} )$

と表せれば等比数列を使って解くことができるということだ。

 

で、この式を展開すると

$a_{n+2} - (◇+△)a_{n+1}+(◇+△)a_{n} =0$

となって、これ(◇、△)って

$t^2 - (◇+△)t+(◇+△)t =0$

 から得られる2解だね、となる。

 

実際に解くと

$t=\dfrac{1}{2}, 1$

となることがわかるけど、これらはどっちを◇、△にしても自由だ。

 

これを当てはめて等比数列の一般項を求める作業をすれば答えが出る。

ここで少し楽をすると、結局この2解は係数ゆえに公比になるわけで結論的には、

$a_{n}=A \times \left( \dfrac{1}{2} \right) ^{n}+ B \times 1^{n}$

という形をしているはずだ。

 

これにわかりきっている値、

$a_0=0$

$a_5=1$

を代入すれば、AとBの簡単な連立方程式になるので、これを解いて、

 $a_{n}=\dfrac{32}{31} \times \left( \dfrac{1}{2} \right) ^{n}+ \dfrac{32}{31} \times 1^{n}$

 と姿を現す。

 

あとは、求めたいのは$a_{1}$なので、代入すると

$a_{1}=\dfrac{16}{31}$

 と求まる。

 

このゲーム、1万円を元手に確率約$\dfrac{1}{2}$で5万円手に入ることがわかる。うん。いいギャンブルだ。