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問題解決と数学(単問解説)

前回共通テストを用いた新しいテーマを始めるぜ!って意気込んでおいて、さっそく別テーマ。

 

このブログにちょっと面白い問題一緒に考えよーぜというカテゴリを設けたい。

数学っていろんな論者がいるけれども、今のところ学校教育における1科目って捉え方が一般的で、その効能なんてのも色々あるはずだけど実感できている人はまだまだ少ない。

 

ボクは、なんだかんだまずは問題解決のための考える練習材料というのが一番端的な効能だと考えていて、数学というのは抽象的な学問、或いは構造を学ぶ学問なのだから、問題解決の構造というものを意識できれば社会で十分役に立つものになるんじゃないかと思っている。

 

それの実践演習ということで、手ごろな問題を持ってくるので、まずはそれぞれ手元で考えてみて、問題解決のためにどんな経路で頭を動かしたのか確認できるような記事を目指したい。

 

ということでさっそく問題。

 

$m, \  n$をそれぞれ自然数とする(ただし、$m>n$)。

このとき、$m!$が$(m-n)!n!$で割り切れることを示せ。

 

わかる人には瞬殺な問題。

ちょっと腕を組んでしまった人と一緒に考えてみたい。最初の一手に迷うとき、まずはどう問題を解釈するか、ヒントを読み取ることを考えてみる。平たく言えば、特徴からの連想ゲームだ。

 

この問題から読み取れる特徴は、

自然数

階乗

がでてくることだ。

自然数は、正の整数と捉えれば整数問題的アプローチが取れるなと発想することができる。一方階乗は場合の数の単元で登場する計算で、場合を数えるときに使うものという印象が強い(高校数学までの範囲においては)。

 

整数問題と階乗という、一見別々の単元の要素が現れているわけだけど、こんなときは条件がきつい方に従うのが得策だ。条件がきつい分だけ、道(解法)が限られるので考えるパターンが少なくて済む。今回は階乗の方が条件がきつい。

 

さて、改めてボクらは階乗について何を知っているだろうか。初めて登場したのは順列を考えるときだ。例えば、5つのものの並び替えのパターンを数えるとき、

$5!=120$

なんて計算を行う。これが発展して、5つのうち2つを取り出して並べるパターン数は、

${}_{5}P_{2}=20$

と計算するし、さらに並べ方は問わないパターンだけを数える場合は、この$20$パターンのうち入れ替えても同じ分を除算して

${}_{5}C_{2}=\dfrac{{}_{5}P_{2}}{2!}=10$

この例を一般化すると、

${}_{m}C_{n}=\dfrac{{}_{m}P_{n}}{n!}=\dfrac{m!}{(m-n)!n!}$

となる。ここで、$m$個の中から$n$個並べる順列(${}_{m}P_{n}$)を考えると、$n$個とってきたときに$n!$通りの並べ方が考えられる。組み合わせを先に考えると、組み合わせごとに$n!$通りが存在するから腑に落ちる。これがボクらが階乗について”知っていること”だ。

 

これを片隅において、問題文を振り返ってみよう。$m!$が$(m-n)!n!$で割り切れるとは、

$\dfrac{m!}{(m-n)!n!}$が整数であることと同じことを意味している。

$m$個のものから$n$個を選ぶ組み合わせは当然自然数なわけで、

$\dfrac{m!}{(m-n)!n!}={}_{m}C_{n} \in \mathbb{N}$

とわかる。コンビネーションは自然数でしか定義されないし、公式の過程から、導出された値は必ず自然数となる。

 

これを整数問題の解釈のまま挑むと大変だ。$m!$に$n!$の階乗が含まれることから、$m!$が$n!$で割り切れることは容易にわかるが、その商が$(m-n)!$で割り切れることを示すことは少々厄介だ。

 

問題の解釈の仕方で、その問題の難易度は変化する。だから問題解決をする確率をあげる一つの方法は、問題の解釈を多く持てるようにしておくということだ。

 

ときどき算数の話題で掛け算の順序の議論を目の当たりにする。順序が重要派は単位×数量の枠に当てはめて演習することで、計算パターンの定着を図っていると理解している。でもその行為は逆に解釈を狭めていることに他ならない。掛け算の順序を逆にしたとき、そこにはまた別の解釈が存在しているはずだ。

 

ある事象を自分なりに解釈し、問題解決を図る訓練が数学を学ぶ一つの意味だという観点からは、解釈を狭める態度はゴールから遠ざかっていると思ってしまう。逆に書いた時にはどんな解釈が可能なのか、問題を解くときにどんな解釈をしているのか。そこを丁寧に確認していく作業が重要なのではないだろうか。