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【一行問題】カテゴリを考える

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とても今更、あけましておめでとうございます。

長らくお休みを頂いていました。今年もボクなりに更新を続けていきます。

 


 

2019年の最初の更新の今回は、一行問題

京都大学の過去問からもってきてみた。まずは少し考えてみてほしい。

 

$n^{3}-7n+9$が素数となるような整数$n$をすべて求めよ
2018京都大学・文系
 
 素数となるような整数を求めるわけだから、いわゆる『整数問題』と捉えるのが一般的なんだろうけど、このカテゴリをどう判断するかということに焦点を当ててみたい。
 
高校時代の定期テストでは、そもそも教科書をカテゴリごとに習ってそれをテストとして課す形なので、意識しなくてもカテゴリは勝手に決まる。あえて別のカテゴリとみなして解くことができたとしても、それは学校の先生の思惑とは異なるのでいい顔はされないかもしれない。
 
しかし、受験数学のような出題範囲を広く問うものでは、問題がどのカテゴリに属しているのか判断することから始まる(カテゴリなんて意識してねーよという人もいるかもしれないが、無意識にカテゴライズしてたりするものだ)。そして多くの場合、その判断は直感的に行われている。サインコサインがでていれば三角関数だし、矢印があればベクトルという具合に。
 
ある問題がどのカテゴリに属すかは、コンセンサスのようなものはあっても、究極的には解き手の判断であって、正解があるわけではない。ちゃんと正答につながればいいわけで、自分が解くために適切な判断さえできればいい。そういう意味では(全然詳しくないし山登りとかむしろ嫌いだけど)、無責任に言えば、いろんなルートを持つ富士山の登頂に似ている。
 
別の例を出すと、カテゴリはFF5におけるジョブシステムみたいなものともいえる(ネタが古くてごめんなさい)。どの能力を使いたいかでジョブが決まるように、どの公式や性質を使いたいかでジャンルは決まる。
 
そんな重要なカテゴリを感覚的に判断するのではなく、できるだけ再現可能な考え方で取り掛かってみたい。ひらめきという名のギャンブルは解けたときにボクらに快感をもたらすが、それを試験場で期待するのはリスキーだ。
 
ということで。
今回の問題に沿って考えてみる。問われているものは整数で、その条件は与えられた3次多項式素数であることだ。
 
この整数と3次多項式それぞれが属するジャンル、あるいはその組み合わせ(が属するジャンル)が、この問題のジャンルに繋がる。
 
ゆえに、
整数:整数問題
3次多項式:数と式・(3次)関数
組み合わせ:数列
が候補となる。組み合わせで数列とあることに違和感がある人がいるかもしれないが、数列って変数が自然数である関数と捉えることもできるはずだ。
 
これらと問題文が与える条件を道具に今回の問題を解いてみる。問題文が与える条件とは、今回の3次式が素数ということだ。
 
ここで悩ましいのが、条件で素数と与えられても、ボクらは素数に関して持っている道具がとても乏しいということだ。
 
素数とは、
約数が2個であるような整数
ということだった。約数とは割り切れる数のことだから、対象となっている式が積や分数の形になってくれないと考えようがない。この定義以外に知っていることは、具体的な2,3…などの値くらいだろう。
 
 ということで、因数分解できないかなと式を眺めてみる。定数項が9な時点で難しい。9の3乗根が整数ではないから因数分解なんてできそうにない。
 
そうすると、整数問題ではない別のジャンルのアプローチで考えるのではないかと思ってみる。でもここで重要なのは、この問題の条件が素数なわけで、他のジャンルからのアプローチでボクらは素数を表現する術なんて知らない。
 
今回の問題で、知らないことをいくら考えても妙案はでてこないだろう。一般的な素数を表す式を編み出すことができたら、数学史に名を残すことができるはずだ。
 
他のジャンルから素数を扱うには、解こうとしている問題が特別な状況にある必要がある。例えば、素数といっているけど、実は2しかとらないよとかそういうことだ。
 
ゆえに、$n^{3}-7n+9$がこの問題特有の特殊性をもっていると期待して、それを暴くことを考えたい。
 
 整数問題的アプローチでは有効な道具が思いつかないので、残るジャンル候補のうち、数列として扱ってみる。なぜこれを選んだかというと、数列として見做すということは、表現の形から一般項であると解釈するわけだが、数列が自らを表す手段としては一般項と漸化式があるわけで、漸化式にしたときになにか特徴が出てこないかと期待するからだ。
 
$ a_{ n }=n^{ 3 }-7n+9 $
 
とおく。すると
 
$ a_{ n+1 }=(n+1 )^{ 3 } -7 ( n+1 )+9 $
$ =n^{ 3 } +3n^{ 2 } +3n+1-7n-7+9$
$ =n^{ 3 } -7n+9+3n^{ 2 } +3n-6$
$ =a_{ n } +3(n^{ 2 } +n-2$
 
となる。ここで整数な目でこの漸化式をみると、
前の項に3の倍数足したものが次の項
と読める。
ちなみに初項は
 
$ a_{ 1 }=1^{ 3 } -7+9=3 $
 
 だから、与えられた式は3の倍数を表すものだったとわかった。
 
ということは。
2項目以降は3で割り切れるわけだから、素数という言葉の正体は3だったということになる。
 
 つまり
 
$n^{ 3 }-7n+9$が素数となるような
$ \Leftrightarrow n^{ 3 } -7n+9 $が3となるような
 
 ということだ。ゆえに素直に等号で繋いで
 
$n^{3}-7n+9=3$
 
 を計算すると
 
$n^{3}-7n+6=0$
$(n-1)(n^{2}+n-6)=0$
$(n-1)(n-2)(n+3)=0$
 
となる。これから$n=1, 2, -3$とわかる。
 
多分、この問題なら適当に数値代入して実験して、3の倍数であることを見抜くのが王道かもしれないけど、ボクの中では実験は最終手段なので数列というジャンルを織り交ぜて計算してみた。
 
では、今年もよろしく。