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2=√2の謎を解く。

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季節の風物詩じゃないけど、定期的に話題になる数学的コンテンツがある。

 

例えば、小学校教育における掛け算の順序問題がそうだ。ボク個人としてとてもくだらないテーマだと思うけど、

1人3個リンゴを配るとして、6人に配るときりんごは全部でいくつ必要か

みたいな問題で、

$$3 \times 6$$

と計算するか

$$6 \times 3$$

と計算するかで意味が異なるというものだ。単位と個数で記載位置が決まっているらしいのだが、”単位”というものの解釈がそもそも変わりうるので教える側の都合としか思えない。

 

掛け算の順序問題はあまり語ることがないから掘り下げないけど、風物詩ネタとしては次のような問題がある。

 

下の図を見てほしい(手書きで申し訳ない)。

1辺の長さが1の正方形において、対角線の長さは$\sqrt{2}$となる。

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一方、赤い線の長さに注目すると、

$$\dfrac{1}{4} \times 8 = 2$$

となる。

これを対角線を長さ$\dfrac{1}{4} $に区切った階段の比較という観点でみると、この4分割から分割数を増やしていくと、階段数が増えて対角線に近づいていく。

 

このとき、どんなに分割しても階段の長さは一定で常に2になる。数式で書くと$n$分割したときは

$$\dfrac{1}{n} \times 2n = 2$$

となる。

 

階段はどんどん数直線に近づいていき、その値は常に2なわけだから、結果として

$$\sqrt{2}=2$$

となることが示された気分になる。

 

事実は、

$$\sqrt{2} \neq 2$$

なわけだからどこが間違っているのだろうか。

 

これ系の話として、対角線でなく90度の扇形の弧の長さを用いても同じ議論ができる。

 

矛盾の説明として時々聞くのが、階段の隙間の話だ。

簡単にいうとどんなに細かく分割してもぴったり重なることはなくて、ちょっと隙間ができる。だから同じにならないんだよ、みたいなやつだ。

 

Twitterでこれ系の問題が話題になるたびにこの説明で鼻を高くしている(ように感じる)輩が現れる。でも、この人は極限をわかっていないんじゃないか、と毎度感じている。

 

似たようなものとして、円の面積の公式の話がある。$S$を円の面積$r$を円の半径として、おなじみ

$$S=\pi r^2$$

と表現できる。

これは半径$r$の円を細かい扇形に切り分けて

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これを上下交互にならべて長方形もどきを作る。

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この扇形を細かくしていくと長方形もどきがどんどん長方形らしくなっていく。長方形の面積は

縦 × 横

なので、この場合

半径 × 円周の半分

となる。これを数式で表すと

$$S=\pi r^2$$

となる。

 

この円の説明では、隙間というか分割を大きくしたところで実は長方形でないことを理由に

$$S=\pi r^2$$

って嘘だよねとはならない。

 

階段の話と円の話で何が違うのだろうか。階段を細かくしていく行為と、扇形を細かくしていく行為は何が違うのだろうか。

 

このことをちゃんと精密に語ろうとすると測度論が登場してしまうけど、ここでは感覚的な話をしているので感覚的なままで進めたい。

 

極限の計算は高校生までは”だんだん近づく”という日本語のままで扱われて、その”だんだん”具合は議論にならない。でも本当のところは近づき方は関数によって違いがあって、例えば

二次関数$y=x^2$

対数関数$y=\log x$

は両方とも$x \rightarrow \infty$で$\infty$に発散するけど、無限大に駆け上がっていくスピードは2次関数の方が早かったりする(この事実自体は大学受験数学とかで取り扱うかな)。

 

ここで抑えておきたいのは、”近づいていく”ということだ。千里の道も一歩から、でゆっくりでも歩き出せば寿命がなければいつかはどこにでも辿り着くことができる。逆にずっと同じ場所で足踏みをしていれば、どんなに年月が経とうが千里の道は僅かも進まない。

 

最初の問題における階段の長さは、ここでいう足踏みをしている。図で書いたときにはたしかに対角線に近づいていくけれど、その”長さ”を問われると2という足踏みをずっと続けている。だから”長さ”という観点では、一向に近づいていない。

近づいているのは見た目であって、それが極限で対角線と一致したときは別の手続きで手に入れた$\sqrt{2}$という長さのものになる。そう、見た目と長さは別問題であって、ちゃんと近づくという態度が肝要だ。

 

円の面積を振り返ると、扇形を細かくすればするほど、長方形もどきの面積は長方形に近づいていく。ちゃんと近づいているからこそ、結論として長方形と同じ式で値を得ることができるわけだ。

 

千里の道も一歩から。近づこうとしてないのに、突然理想を手に入れることができないということは、まるで何かを示唆しているようだ。