子供のころは数学が別に好きなわけでも得意なわけでもなかった。なかでも中学のときに出題された歯車の問題はとても当時のボクをイライラさせた。
学校の先生は、歯車の問題は逆比がポイントだとか、パターンを覚えればすぐに解けるようになるとかいってたけど、イマイチ腹落ちしてなかったのを覚えている。もちろん、教え方が悪いとかじゃなくて、ボクのオツムがその程度だったということだ。
今回はあの頃のボクのために、今一度向き合ってみたい。当然今となっては簡単に解けるわけだけど、ボクなりの考え方で中学数学を語ってみたいと思う。でも、ボクのブログって中学生とか見てないと思うから、みんなであの頃の問題をまた考えてみようぜ、という姿勢だ。
まずは問題。
歯数がそれぞれ72、26の歯車A、Bがかみ合っている。歯車Aが$x$回転する間に歯車Bは$y$回転する。$y$を$x$の式で表わせ。
いくつかパターンは分かれるみたいだけど、基本こんな問題。頭の中で2つの歯車をぐるぐる回して、思考停止に陥っていたのを思い出してしまう。
ここで考えたいのは、歯車の問題を解けたところでなにも嬉しいことはない、ということだ。いやいや、そんなこというなら題材として取り扱うなよ、と言われそうだけど、まーまー。
歯車の問題は、数学の問題として捉えているわけで、物理とか他の学問で取り扱っているわけじゃない。どういうことかというと、数学を考える上で抽象的な構造のルールをもって、この具体的な事象を解決しようというのがそもそもなはずだ。そういう意味では、
歯車の問題を解くポイント
ではなくて
歯車の問題も解けるポイント
というところを理解して然るべきだ。うん。そういう意味で、歯車の問題だけ解けても仕方がない。
ということで、改めて問題を読んでみる。今ボクらが求めたいのは、
$y$を$x$で表した式
だ。これはつまり、
$y=$○○○
という形の式を立式せよということなわけだけど、ここには「=」が存在している。
「=」って何かご存知だろうか。はい。そうです。右と左に書かれたものが「同じ」ということを示す記号だ。この記号を使った式で表せ、ということは、逆に言えば、この問題において何かと何かが「同じ」だということだ。
ここで大切な話。何かと何かが同じ、というとき、その何かと何かは異なる点を持つ。え?って思うかも知れないけど、よくよく考えてみると当たり前だ。ほんとに同じものが2つあったら、ボクらはそれらを区別できない。本当は何かが異なるからこそ、「同じ」という解釈を与えるわけだ。
例えば、「ボクとキミは一心同体だね」というとき、ボクとキミは本質的には異なるものという前提がある。もっと言えば、「ボクとボクは一心同体だ」なんて言い出したら、ボクの中に異なる存在を暗示することになる。つまり、何かと何かが同じだというときは、異なる何かがそこにあることと表裏一体なわけだ。
そんな目線で問題をみると、すぐに同じものが見つかればそれに越したことはないが、見つからないならば、逆の異なるものを探してみる。全部異なるじゃん、と思いそうだが、最も一般的なところから探してみる。
それは、勿論歯車Aと歯車Bだ。これらは異なる歯車なわけで、だからこそ、歯数が違うし、回転率も異なる。これらを「=」で表したいわけだから、
歯車Aの何か=歯車Bの何か
ということになる。
ここで、与えられた情報を確認しておこう。
・歯数は、A72 B26
・Aが$x$回転する間にBは$y$回転
この2つの情報から何がわかるだろう。歯車ふたつを一度に考えるとしんどいので、順番に考える。
歯車Aは歯の数は72で$x$回転するときに得られる情報はなんだろうか。
ここで、また少し脱線で一般論。
ボクらは、丸いものを考えることが苦手だ。
丸いものは難しい。
歴史を振り返っても明らかで、まず直線的なものが明らかになったあとで、丸いものの情報が得られていることが多い。面積だって、四角と円では難易度が異なる。三角関数は、円を解釈する一つの手段として、$x$方向と$y$方向の動きに分解して問題解決を図るためのツールと捉えることもできる。
ゆえに、丸いもので悩んでいるときは、その丸さから逃れられないか、と考えてみることは一つの作戦になる。
ということで、歯車Aは歯の数は72で$x$回転するときに得られるものを考えてみる。歯車という丸いものを直線化して捉えられないかなと想像してみると、タイヤとタイヤ痕の関係で変換できることに気づく。スタンプローラーとスタンプ痕でも同じだ。
道路上で歯車Aを$x$回転すると、
$72 \times x$
だけ歯車痕が道路につく。スタンプローラーでいえば、この数だけスタンプが押されている状況だ。
・Aが$x$回転する間にBは$y$回転
ということは、
・Aが$x$回転する=$72x$個スタンプが押されている
・Bが$y$回転する=$26y$個スタンプが押されている
・AとBでおされたスタンプの数が同じ
ということだ。
つまり
$72x=26y$
と表現することができる。ここから
$y=\dfrac{72}{26}x=\dfrac{36}{13}x$
と求まる。
以上、大人になって改めて解いてみた。パターン的な態度で一刀両断とするにはもったいない問題だ。