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【問題解説】センター試験平成30年度本試験 IA 第2問 (4)

今回で第二問終了です。夏には終わりたいです。頑張ります。 f:id:mathbanker:20180514135451j:plain

この問題は、ちゃんと解く方法手を抜く方法とがあります。・・・なんてことをいうと、勿論手を抜く方法がよくて、そっちの解法を読んでなるほどなんて思ってくれたりすると(そしてそれで終わると)、あなたはそれだけの人になります

別にちゃんと解く方法を身につけないと勉強にならないとか、楽をしちゃダメだなんて精神論を言うつもりは毛頭なくて、問題を見たときに二つ道があるなと見抜くすべをわかってないと使いどころを見逃すよということです

で、どうやって見抜くかと言う前にそろそろ定番な説明を。

求めるソがある式をみると、があります。がある式はご存知の通り等式と呼ばれますが、それは過去に幾度か説明した通り大きく2種類に別れます方程式恒等式です。

数学が得意な人には当たり前な話ですが、苦手な人は=がでてくるとすべて方程式と思ってしまって、恒等式は高校数学の一単元だと思ってしまってたりすると思います。違います。簡単に説明すると、方程式は=が成立する値が存在する式ということであり、恒等式はすべての値で成立する式ということです。

この存在とすべて(全称と言ったりします)は否定の関係にある言葉です。「すべてのひとが自民党の支持者だ」ということの否定は「すべてのひとは自民党を支持していない」ではありません。ひとりでも自民党を支持していないひとがいると成り立たないわけですから「自民党を支持しないひとが存在する」が否定となるわけです。

方程式でない等式は恒等式だし、恒等式でない等式は方程式です。それぞれ使える道具や態度が異なるので、等式がでてきたらどっちかなと考えてみることは大切です。

で、今回の問題はどっちでしょうか。判断するにはいくつかポイントはありますが、まず重要な事実として式変形は恒等式です。式の形を変えたら成り立たない値が生まれたなんてことは起こりません。式変形をしてるだけっぽかったらそれは恒等式です。問題文見たら、いかにも展開している風です。

そして、今回の問題ではヒントとなる等式が与えられています。このヒントの等式
$ (x_1+x_2+\cdots + x_n) \overline{w}=n\overline{x}\overline{w} $
は、与えられた定義式$\overline{x}$と$\overline{w}$の式を組み合わせただけなので、恒等式です。で、これを使って偏差の積の和が別の形で書けるという趣旨の問題文になっていますが、考えている式の=はヒントの等式から引き継いで恒等式の=になると考える事は自然です。

他方、方程式な目線でも見てみます。改めて方程式とは、普通は異なる左辺と右辺が同じ値になることもあるよという式です。普通は異なるということは、左辺は今偏差の積の和なので、右辺は別物ということになりますが、問題文において偏差の積以外の立式につながる文言はでてきません。

ということで、この問題文の式は恒等式と捉えます。

恒等式として考えると、どんな値でも成り立つという利点が使えます。

センター試験に代表されるようなマーク試験というのは、筆記試験に比べて特性があって、必要条件さえわかればよかったりします。記述だと、たまたまその値では成立したけど、満たすべきすべての値で示せてないよねとなるところ、マーク試験ではすべての値で成り立ってるんだからこの値でも成り立つよねって態度で解くことが可能なときがあります。この辺の違いが、冒頭のちゃんと解くだとか手を抜くってところに繋がります。

まずはマーク試験的なところに着目して手を抜いてみます。この問題では自然数とか実数値のデータが登場します。これらがどんな値でも成り立つよってことなので、具体的に楽にゴールに辿り着く値を考えます。

楽にゴールに辿り着く値です。$n=1$、$x_1=1$、$w_1=1$としても、計算は楽ですがゴールに辿り着きません。ゴールの選択しそれぞれに代入したときに判別できる値である必要があります。

$n=2$、$x_1=1$、$x_2=3$、$w_1=2$、$w_2=4$とすると、$\overline{x}=2$、$\overline{w}=3$です。このとき各選択肢の値は
⓪ $ \overline{x} \ \overline{w}=6$
① $(\overline{x} \ \overline{w})^{2}=36$
② $n \ \overline{x} \ \overline{w}=12$
③ $n^{2} \ \overline{x} \ \overline{w}=24 $
となります。

で、肝心の式のほうにも代入してみると(ケの部分を☆とする)
$ (x_1-\overline{x}) (w_1-\overline{w})+(x_2-\overline{x}) (w_2-\overline{w}) = x_1 w_1 + x_2 w_2 - ☆ $ $ (1-2) (2-3)+(3-2) (4-3) = 1 \cdot 2 + 3 \cdot 4 - ☆ $
$ \therefore ☆ = 12 $
ゆえに②が答えとわかりました

つぎにちゃんと解いてみます

左辺を、ヒントの等式を使って右辺の形を作成する流れを考えます。右辺から考え始めるのはすべての項がわかってないので悩ましいです。で、左辺の形を改めてじっくりと眺めてみます。頑張ってすべての項を展開すると右辺のわかっている部分の項は出てきそうな気がします。n個全部展開するの?!なんて思うかもしれません。でもでも「$\cdots$」みたいなのが入っている式って、実は考えるところは両端と挟まれた部分の代表値くらいでいいことが多いです。「$\cdots$」が使われているということは、書かなくてもわかるでしょということなわけです。書かなくてもわかるのはなぜかというと規則性があるから書くまでもないよねということです。なので規則性が見えないってなったときだけもう少し具体化してみるわけです。

両端と挟まれた部分の代表値ってのは具体的にどこの部分でしょう。両端はもちろん問題が書いてくれている部分です。この問題では規則性がきれいに見えています。$(x_1-\overline{x}) (w_1-\overline{w})$、$(x_n-\overline{x}) (w_n-\overline{w})$です。挟まれた部分の代表値は、文字は何でもいいわけですが例えばk番目の値のことです。つまり$(x_k-\overline{x}) (w_k-\overline{w})$です。この3つを展開すれば十分です。

$(x_1-\overline{x}) (w_1-\overline{w})=x_1 w_1 -x_1 \overline{w} - \overline{x} w_1 + \overline{x} \ \overline{w}$

$(x_k-\overline{x}) (w_k-\overline{w})=x_k w_k -x_k \overline{w} - \overline{x} w_k+ \overline{x} \ \overline{w}$

$(x_n-\overline{x}) (w_n-\overline{w})=x_n w_n -x_n \overline{w} - \overline{x} w_n + \overline{x} \ \overline{w}$

で、左辺をそれぞれn個全部足したものが求めるもので、そのときの右辺を考えてみます。右辺は大きく分けて4つのパートに分かれています。代表値をつかうと(符号省略)

$x_k w_k$
$x_k \overline{w}$
$ \overline{x}w_k$
$\overline{x} \ \overline{w}$

の4つです。これらパーツをそれぞれn個足したときを考えるわけです。上から順番にn個の和を計算してみると

$x_1 w_1+\cdots x_k w_k +\cdots + x_n w_n$
これはそもそも最初から見えていたパーツです。これ以外のパーツからケが生まれる算段です。

$x_1 \overline{w} +\cdots+ x_k \overline{w} +\cdots+x_n \overline{w} $
$=(x_1 +\cdots+ x_k +\cdots+x_n ) \overline{w} $

これは共通因数でくくるとヒントの式が現れます。ヒントの式には$\cdots$が含まれているわけで、ヒントの式そのものか展開した式どちらかの形で脳内フィルターをおいておくことです。つまり、$\cdots$があるところでは同じ形を見いだせないかと思うことです。するとさらに式変形を進められて

$=n \overline{x} \ \overline{w} $

となります。

次に

$\overline{x}w_1 + \cdots + \overline{x}w_k + \cdots + \overline{x}w_n$

です。後出しジャンケンのような説明をしますが(ただ最初に説明しなかっただけですが)、問題文に戻って変数$\overline{x}$と$\overline{w}$の定義をみると二つの式は対称的です。どっちかの式が特別な特徴を持っているわけではありません。

数学における対称性は、ガロア理論が好きな人には当然な態度かもしれませんが、重要なものです。問題を解くに役に立たなかったり、役に立ったとしても大したことなかったりすることもありますが、そんなことは結果論です。見つけたらこのことが何かに活かせないかと心に留めておく習慣は無駄ではありません

そんなモードでヒントの等式の部分を今一度見てみると、

$ (x_1+x_2+\cdots + x_n) \overline{w}=n\overline{x} \ \overline{w} $ などに注意すると

と書いてあります。これには二つ着眼点があって、一つは定義式が対称的だったのに対しこの式は対称性が壊れていること、もう一つは「など」という言葉があることです。対称性がある文字に関する式が対称性がなくて、もう一つの存在を匂わせているわけです。このことが言っているのは、もう一つの式とこの式で対称性は維持されて、そのもう一つの式の方が明らかだから省略するよ(=だからなどって書いとくよ)ということです。つまり、

$ (w_1+w_2+\cdots + w_n) \overline{x}=n\overline{w} \ \overline{x} $

という式の存在が実はあるわけです。するとあとは簡単で、先ほどと同じ流れです。

$\overline{x}w_1 + \cdots + \overline{x}w_k + \cdots + \overline{x}w_n$
$=(w_1 +\cdots+ w_k +\cdots+w_n ) \overline{x} $
$=n \overline{x} \ \overline{w} $

となります。

最後に

$\overline{x} \ \overline{w} + \cdots + \overline{x} \ \overline{w} $

です。単に$\overline{x} \ \overline{w}$って定数がn個並んでいるだけです。なので$n\overline{x} \ \overline{w}$となります。

これで、計算してきた4パートをそれぞれ合わせると元の式なので、符号に注意して元に戻すと、

$x_1 w_1+\cdots x_k w_k +\cdots + x_n w_n-n \overline{x} \ \overline{w} -n \overline{x} \ \overline{w} + n \overline{x} \ \overline{w} $

$= x_1 w_1+\cdots x_k w_k +\cdots + x_n w_n-n \overline{x} \ \overline{w} $

となり先ほどと同じ結論である② $n \overline{x} \ \overline{w}$が導かれました。

数多の学校の先生はこの後者の解き方なのかもしれませんが、僕なら時間の限られたセンターみたいな問題ではちゃちゃっと手抜きの解法で解いちゃうと思います。でも改めて言いますけど、大切なのは手抜きの方法で解くということより、それで解けるという判断の方です

いやー振り返ると5000文字超の説明になりました。ここまで読んでくれた人がどれくらいいるのだろう。読んでくれた人、ありがとうございます