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【問題解説】センター試験平成30年度本試験 IA 第2問 (3)

今回はデータの分析の続きです。この分野はそもそも数学なのか、これを数学といったら地理も数学となりはしないかなんて話もありますが、どんな見解があっても難問になりにくいゆえに得点しやすい分野であることには間違いないです。

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下にある箱ひげ図が(a)~(d)で表されていて、問題文の男子/女子、単距離/長距離の別がわからないので、最初にまとめて明らかにしてしまうことを考えるのも手ですが、今回は一つずつ選択肢を検討していく中で必要な都度明らかにすることにします。

ということで、選択肢を⓪から順に考えていきます。毎度話してますが、図を見るときは全体的な傾向を見るか、ピンポイントで存在を見るかです(細かい説明は去年の記事をご参考のほど)。

⓪: この選択肢に限った話ではありませんが、問題では散布図箱ひげ図が与えられているので、まずどちらを使うべきかを判断する必要があります。相関を確認するには散布図が有効です。箱ひげ図じゃわかりません。

で、すべて負の相関があるという表現から、一つでも正の相関があれば成り立ちません。そんな目で散布図を見てみると、すべて分布は右肩上がりです。オイオイ。こんなときは正の相関が混じってる程度で判断させるのが常套手段な気がしますが、まぁそれだと正負を間違って覚えている奇特な人さえも正解できてしまうからこれでいいんでしょうね。というか、実質身長と体重の分布なので、正の相関じゃなきゃ変です。人間じゃないです。

①: 中央値が一番大きいことを判断できるのは、箱ひげ図です。散布図ではこの辺かなと当て推量はできても、正確な位置はわかりません。箱ひげ図では四分位範囲のボックスの真ん中の線がそれを表しているので、それが一番大きな値に位置しているものが最大となります。眺めてみると、(a)がそれとわかります。が。(a)が男子長距離かどうかを考えなければいけません。男子/女子、単距離/長距離の情報を持っているのは散布図のほうなので、そっちと紐づけて(a)が何たるかを探る必要があります。
とても当たり前な話ですが、二つのものを紐づけるときにはその二つのものに共通のものが必要です。あのこはうちの学校の広瀬すずだ、なんていうときはあのこと広瀬すずに共通のものがあるから言えるわけです。
では、散布図と箱ひげ図に共通で読み取れるものとは何でしょうか。

いま僕らが手にしているものは箱ひげ図の情報の方です。これを手に散布図を見に行くわけです。箱ひげ図はZの値についての図です。Zについていろんな値が読み取れるようになっています。そこで、散布図からもZの情報がとれると紐付けられそうです。

散布図をみてみると、縦横どちらにもZはありません。そんなんじゃ読み取れないよと諦めたら、そこで試合終了です。我々が持っているものはZだけなわけですから、散布図においてZはどう表現されるのかを考えればいいわけです。

悩むときはまず定義からです。Zの定義は問題文にあります。
$ Z= \dfrac{ W }{ X } $
です。これは散布図の横軸分の縦軸なわけで、いわゆる直線の傾きというやつです。

そんなの気づかないよという人へ。問題文を読むと4つの傾きの直線が補助的にひかれている旨の説明があります。つまり、問題文はどこかでこれを使うから覚えとけよといっているわけです。これを読んだときから頭の片すみに原点を通る4つの傾きの直線を置いておくべきです。
そうすると、少なくともこのZの定義に振り返った時点でつながるものに気づけます。

Zは傾きとして扱うとわかったところで、具体的にどう二つの図を紐づけるかを考えます。傾きという目線で改めて箱ひげ図をみるわけですが、補助的にもらった4つの直線の傾きの具体的な値を知っているので、その位置が箱ひげ図で確認できます。$ l_1 $ から $ l_4 $の傾きはそれぞれ15、20、25、30です。箱ひげ図には親切にもその値がふってあります。これらの値と(a)を観察したときに、何か(a)ならではのことがわかれば、そこを手掛かりにどの散布図を表しているのかがわかります。

(a)ならではのことというのは、「(a)だけが〇〇〇」という表現にできるということです。4つの傾きの値を参考に「(a)だけが〇〇〇」という文章を考えてみます。見た目にあきらかに「(a)だけが$l_4$の傾き30を超えている」的な文になるはずです。すると次にとる行動は、「(a)だけが$l_4$の傾き30を超えている」散布図を見つけることです。それは男子短距離だとわかります。ゆえに①も成り立ちません。

②: Zの範囲が最小とは先ほどの考察から傾きの範囲が最小とも捉えられるので、そういう意味では散布図でも箱ひげ図でも良さそうです。すると後はどっちが判断しやすいかということになります。散布図で傾きの範囲が一番狭いものを選ぶことと箱ひげ図で線が一番短いものを選ぶことを比較すると、言わずもがな箱ひげ図の後者です。そんなことないよと言い出す人がいるかもしれませんが、散布図の傾き比較は二次元平面での比較、箱ひげ図の直線比較は一次元の長さ比較です。次元が低い場所での考察が考えやすいのは一般論として言えることです

で、そんな目線で箱ひげ図をみてみると、明らかに一番短いのは(d)です。すると後は考え方はさっきと同じで、(d)が男子/女子、単距離/長距離のどれに紐付くのかを見抜けばいいわけです。傾きの値と箱ひげ図がどんな関係になっているか、「(d)だけが〇〇〇」という文がどう成り立つかを考えるわけです。

先ほどより更に一段くどく説明すると、図表から特徴を見出すときには極端な箇所をみることがポイントです。極端な箇所とは、名前が付いているような場所です。最大値とか中央値とか四分位範囲とかそういうやつです。そういう名前があるものに示されたものがどういう風に振舞っているのかを探すことが、○〇〇を見つける方法です。例えば、「(d)だけが$l_4$の傾きである25に届いていません」。ということで、$l_4$に届いてない散布図を探すと、女子長距離のみです。ゆえに②も成立していないことがわかりました。

③:
四分位範囲が最小なのは男子短距離なのかという考察です。四分位範囲をみるためには勿論箱ひげ図ですが、男子短距離はもう特定済みで(a)だと分かっています。で、(a)のボックスは他のボックスに比べ明らかに最小ではありません。よってこれも不正解。

④: ここまでの選択肢全部不正解で、残る選択肢が二つで求める答えも二つなので、もう選択肢を読む必要すらありません。試験本番においては、念の為に内容を確認しておくとかは後回しにして、④、⑤をマークして次の問題に行くことが速く解くということです。でもここで解説まで割愛してはあまりよろしくないので、見るだけ見ときます。

Zがすべて25より小さいということは、すべて$l_3$より下にあるということです。図をみると確かにそうなっています。

⑤: 最後です。今までの考察から(a)と(d)は正体がわかっているので、残る(b)と(c)が男子長距離と女子短距離ですどっちがどっちかを見抜けばいいわけです。

(b)と(c)を見比べます。最大値・最小値どっちでもいいのですが、どっちかに着目するとすぐわかります。最大値をみれば、$l_4$に近い点をもつ男子長距離が(c)だとわかるし、最小値をみれば$l_1$に近い点をもつ女子短距離が(b)だとわかります。

気が付けばGWも終わったのにまだまだ全問解説終わらずですが、次回第二問ラストです。お楽しみに。できるだけ早めに更新します。