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【問題解説】センター試験平成30年度本試験 IA 第2問

ベクトル数C(理系科目)になるらしいです。ということは、
「俺とあいつの彼女はベクトルは違うが長さは同じ」 なんて会話は相手が限定されるということですね。

で、まだ解き終わらないセンターⅠAの続きです。

今回は図形の問題です。問題をちらっとみると三角関数(三角比)が出てきています。

幾何は難しいんだよななんて腕組む前に、問題を読んでみましょう

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まだあえて図は描きません。描かなくても解けるとか、描くのが難しいということではありません。みなさんが解くときには是非描いてもらって、僕が描いた図はあとでちょこっとお見せします。

さあ図を描いてみてください。感覚的に長さの割合にほんのり気を配りつつ、ちゃちゃっと描くべしです。超正確に描いてみたところで、それに定規や分度器をあてて答えを求めるわけではないですから、イメージがわかれば十分です。なんとなく頭に浮かべることができるひとはそれもありです。

$\cos \angle ABC$から求めていきます。三角関数とか三角比というくらいですから、問題は四角形といっていても、その中に三角形を見つけ出します。

$\cos \angle ABC$が知りたいので$\angle ABC$を角としてもつ三角形を見つければいいわけで、それはもう$\angle ABC$を読んだ口が教えてくれるくらい明らかに$\triangle ABC$です。

ここで確認しておきたいのは、余弦定理や正弦定理といった定理たちをどのようにあなたの頭の中に格納しているかということです。

一般に$\triangle ABC$に対し

余弦定理
$ AC^{2}=AB^{2}+BC^{2}-2\cdot AB \cdot BC \cdot \cos \angle ABC $
$\ $
正弦定理
$ \dfrac{BC}{\sin \angle BAC}=\dfrac{AC}{\sin \angle ABC}=\dfrac{AB}{\sin \angle ACB}=2R $

が成り立ちます(余弦定理は他の角と辺の組み合わせや$\cos=$の形の式もあるけど、その辺は割愛)。

で、これらを武器として懐にさしておくわけですが、いつ引き抜くかわからぬままに終わってしまったなんてならないようにしなければいけません。引き抜くためのきっかけを意識しておくということです。

といっても、引き抜くきっかけって幾つかあって、おそらく最も汎用的なものをまずは抑えておきたいところです。

余弦定理:
定理の形をよくよくみると三平方の定理に似ています。似ているどころか、三平方の前提である直角を公式に当てはめると、三平方の定理そのものになります。つまり、三平方の定理を一般化したものと考えられます。
ということは、使いどころは三平方の定理と重なるわけです。三平方の定理はどういうときに使いますか?まずは2辺がわかっていて、1辺がわからないときです。三平方の場合、前提が直角三角形ですが、一般的なバージョンだと角度が何なのか、$\cos \theta$がどんな値かもわかっている必要があります。
また、逆に三平方の定理が成り立てば直角三角形といえるのと同様、3辺すべてがわかっていれば角度の情報が手に入ります

正弦定理:
余弦定理のように何かの一般化という形には見えませんが、似たような観点で考えてみます。似たようなというのは、余弦定理の使い方においては、つまりは使われている変数のうち何がわかっていて、何がわからない場合に使えるのかということがポイントになっていました。この態度を同じように正弦定理にもあてはめてみると、登場する変数の種類は辺の長さ、角度($\sin \theta$の値)、直径(半径)です。定理の形にあわせて、二つの角、一つの辺がわかっているときに対応しているもう一つの辺とか、直径と一つの角がわかっていて対応する一つの辺とか、そんな感じに一つ足りないけど、それ以外がわかりそうなときに使えるものです。

問題に戻って考えてみると、今$\triangle ABC$において、3辺の長さがわかっています。で、$\cos \angle ABC$が問われています。もう、余弦定理以外に道が見えません。

よって、余弦定理にあてはめると、

$ \cos \angle ABC = \dfrac{5^{2}+9^{2}-6^{2}}{2 \cdot 5 \cdot 9} $ $ =\dfrac{106-36}{2 \cdot 5 \cdot 9} $ $ =\dfrac{70}{2 \cdot 5 \cdot 9}=\dfrac{7}{9} $

と求まります。

ここで、$\cos \theta =$に式変形したバージョンでも覚えておいた方が早いとかはさておき、分数計算なんて些細な小学生レベルのことにも一言添えておくと、分数計算をはじめるときは約分する未来がくることは多くのケースで想定されるわけですから、分子や分母がかけ算の形だけの場合(今回だと分母)、あえて計算せずに最後まで(約分できるときまで)放っておくことです。無駄な計算はしないことが、計算ミスを減らすポイントです

で無事$\cos \angle ABC$がでたところで、今度はそのサイン版です。サインとコサインは、一方がわかれば機械的にもう一方がわかります。そう、2乗の和が1になるよというあの公式で

$\sin \theta$は$0 \leqq \theta \leqq 180^{\circ}$で常に正なので根号は正だけを考えて

$ \sin \angle ABC =\sqrt{1-\dfrac{7^{2}}{9^{2}}}=\dfrac{4\sqrt{2}}{9} $

と求まります。

次にいきます。与えられた四角形は台形だそうです。台形ってなんでしたっけ。そうです。少なくとも一組の向かい合う辺が平行である四角形のことです。あなたが最初に描いた四角形をみてください。台形ですか?違いますね。はい、僕のも違います。僕が描いていたものは、崩れたプリンを横から眺めたようなひどい形をしています

ゆえにちょっと図を描き直してみます。どの辺の組み合わせが平行かなと考えてみると、ああそれが問われているのねということに気付きます。

たしかに四角形が台形でしたとわかれば、ぼくらの崩れたプリンにおいて縦2線と横2線のどちらかが平行になっているということです。これが問題文曰く、$CD$と$AB \cdot \sin \angle ABC$を比較するとわかると教えてくれています(「~であるから」とはそういう意味です)。

縦と横どっちが平行なのか考えるのに、$CD$と$AB \cdot \sin \angle ABC$を用いよといってるわけですが、そもそも何がわかると平行だといえるのでしょう。平行線の性質って中学生のころ習った気がするけど、全部角の性質だったような・・・と思っている人もいるかもしれません。

でも同位角とか錯角とか、$CD$と$AB \cdot \sin \angle ABC$の関係と結びつける術がわかりません。なぜ結びつかないのでしょう。わからないときには、何がわからないのかをしっかり認識することが大切です。彼女のキモチがわからないなんてときも、ただただ悩むのではなく、何がわからないのか、何が逆にわかっているのかを考えることが大切なわけで、それと同じです

同位角とか錯角は角度です。一方で、$CD$と$AB \cdot \sin \angle ABC$は辺の長さの比較です(ある辺にサインの値をかけると、斜影の長さになります)。角と辺を結びつけようと思うから難しいわけで、つまるところ問題は平行線を辺の長さの条件から捉えよと言っていたわけです。

平行線の性質において、長さの観点ではどんなことが成り立っていたでしょうか。知っている人には瞬殺な話を続けていますが、ここは徹底して知らないフリをしてみます。

適当に平行線を引いてみます。そこを横切る線をいくつか考えます。線が斜めであればあるほど、平行線で挟まれた線は長くなっていきます。逆に、斜めに引かなければその線は短くなります。最大に短いときは垂線を引いたときとなることが感覚的にわかります。

で、今問題文にある$AB \cdot \sin \angle ABC$は、サインをかけてあるので$AB$に対する斜影の長さです。さっきから自然に斜影って言ってるけど、斜影って何よという人へ。垂直な梯子をのぼって滑れる滑り台があったとします。いま滑り台の地面との角度を$\theta$、滑り台の長さを$l$とすると、梯子の長さは$l \sin \theta$になります。コサインに対して言うこと(例においては滑り台の接地面から梯子までの長さが$l\cos \theta$になる)が多いですが、考え方は同じです。

つまり、三角形の一辺にサインを掛けるとその三角形の高さがでるよということです。で、三角形の高さとは頂点からの垂線の長さです。先ほどの平行線の考察を振り返ると、この垂線という言葉でリンクします

平行線の考察とサインで求まる垂線を併せて考えてみます。崩れたプリン上で、$AB \cdot \sin \angle ABC$は辺$AD$と辺$BC$の間に引かれた垂線だと考えられます。ということは、この2辺が平行であれば、この垂線の長さが最小であるはずで、仮に$CD$の方が短かったらこの2辺は平行でない=もう一方の組み合わせ($AB$と$CD$)が平行ということがわかります。

では具体的に計算して比較してみます。$CD=3$はわかっているので、$AB \cdot \sin \angle ABC$を計算すると、

$ AB \cdot \sin \angle ABC=5 \cdot \dfrac{4\sqrt{2}}{9}=\dfrac{20\sqrt{2}}{9} $

となります。この値と$3$を比較して、どっちが大きいのか考えます。数値の大小の比較をするとき、方法は二つあります。たとえば、$7$と$14$どっちが大きいか問われたとすると、見た目に明らかとかいうのはナシとして、$14-7=7>0$とするか$dfrac{14}{7}=2>1$とするか、つまり差でみるか比でみるかという手段があるわけです。

どっちの手段がいいのかと問われたならば、それは計算が楽になる方です。今、$3$と$\dfrac{20\sqrt{2}}{9}$を比較するのですが、明らかに比を考える方が楽です。

$ \cfrac{\dfrac{20\sqrt{2}}{9}}{3}=\dfrac{20\sqrt{2}}{3^{3}} $

ここで分母と分子を比べるわけですが、まだどっちが大きいのかピンときません。$\sqrt{2}=1.414...$という値を代入して計算もいいですが、この根号部分が直感を邪魔するのであれば、ここだけの比較になるように式変形をしてみるのも手です。

$ \dfrac{20\sqrt{2}}{3^{3}}=\cfrac{20\sqrt{2}}{20\cdot \dfrac{3^{3}}{20}} $

こうすると、$\sqrt{2}$と$\dfrac{27}{20}=1.35$の比較になるので$\sqrt{2}$が大きいとわかります。

ゆえに分子が大きいから、$AB \cdot \sin \angle ABC$が大きいとわかり、かつ辺$AB$と辺$CD$が平行だとわかりました。

最後に$BD$を求めます。ここまで有効活用してきた$\angle ABC$が分断される形になる為に、せっかくの$\angle ABC$に関することが使えません。でも他のところの角の情報はもってないので、どこかの角の情報を計算して求めるか、角の情報ナシで立ち向かうかになります。

ここで重要なのが、「したがって」という言葉です。辺$AB$と辺$CD$が平行であることがわかっての「したがって」です。この平行であることを使えといっているわけですから、平行線の性質を使って$\angle ABC$の情報を引き継いで$BD$を求めたいと考えるわけです。

でその$BD$が求まるプロセスを考えてみると、どれかの三角形の一辺と考えられれば三角関数の武器が使えます。平行線の性質で角の情報が引き継げることと、$BD$が一辺となるような三角形を考えると、それは$\triangle BCD$をベースにすればよいことがわかります。

だって、2辺の長さがわかっていて、間の角度が$180-\angle ABC$となるわけです。$\cos (180-\angle ABC)=-\cos \angle ABC$なので、余弦定理を使うべきで

$ BD^{2}=9^{2}+3^{2}-2\cdot 3 \cdot 9 \cos \angle BCD=90+2\cdot 3\cdot 9 \cdot \dfrac{7}{9}=132 $

$ \therefore BD=\sqrt{132}=2\sqrt{33} $

と求まりました。

最後に冒頭お見せすると約束した画像です(プリンの整形後)。

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