第3問。確率。好物です。
いわゆるくじ引きの問題です。ひいたくじを戻しても戻さなくても、何番目に引いても当たる確率は同じという事実は有名です。でも有名になりすぎて、本問含め使えるときは少ないです。
では、(1)から順番に解いていきましょう。
まず問題文において「少なくとも」という言葉が目を引きます。この「少なくとも」という表現をみたら余事象を考えよなんてことを全国津々浦々色々な先生が解説しているに違いありません。
このことに対し、何も批判はありません。有効な戦略だと思いますが、ひとつコメントするならば、なぜ余事象を考えるのでしょうか。
「少なくとも」という言葉を見るたびに脊髄反射的に余事象に飛びついてしたり顔ができるのは、それで問題がキレイに解けたときだけです。 余事象を考えたがためにどツボにハマったなんてことになったとき、そのルールを教えてくれた先生に迫ってもこれは例外だと軽くあしらわれて終わりです。そうならないためにも、何故「少なくとも」とでてきたときに余事象を考えるのかを抑えておくべきです。
で、これは簡単で、楽に計算ができるケースが多いからです。
確率を計算する為の全事象は決まっています。そして計算したい事象とその余事象に分けることができます。「少なくとも」と言われると、少なくてもいいし、多くても構わないということですから、必然的に場合わけが発生しがちです。余事象が場合わけをしないで済むならそちらを計算するのが好都合です。つまり、余事象を考えたほうがシンプルなことが多いから余事象を考えるんです。
この結論だけを改めて見てみてください。 余事象を考えたほうがシンプルなことが多いから余事象を考えるんです。「少なくとも」という表現は、比較してその余事象をシンプルにしやすいってだけです。
そう思うと実は、めんどくせーなと思ったら余事象をということのほうが適切なのかもしれません。
(1)もそんな目線で見てみると、A、Bの少なくとも一方があたりなので、このままだと場合わけが発生します。そこで余事象を考えてみると、AもBもはずれとなるので場合わけが発生しません。ゆえに余事象の確率を求める方が効率的です。
$$ \frac{2}{4} \times \frac{1}{3} = \frac{1}{6} $$ $$ \therefore 1-\frac{1}{6}=\frac{5}{6} $$
続いて(2)。すぐにわからない場合はまず問題をしっかり観察してみてください。 観察することの基本は、問題文をちゃんと読んで、何を問われているのか、そのための条件は何かをはっきりさせることです。問題文をちゃんと読むとは、主語・述語が何なのかを抑えて、修飾語句や接続詞の役割を理解することです。
問題文は
「…事象$E$は、…の和事象である」
となっています。和事象も事象ですから、事象=事象という文です。イコールで繋いでいるということは、何かが異なっているということです。イコールとは同じという意味じゃないかと言われそうですが、何かが違うからこそ同じと主張するわけです。本当に同じなら、同じという必要がありません。よく例に出す話ですが、「あの二人は一心同体だね」っていうときは、そこに異なる二人がいるからに他なりません。
では、何が異なるのでしょうか。問題文ではあたりで表現されているのに対し、選択肢をみてみるとどれもはずれに着眼したものになっています。
つまり
あたりで表現した事象=はずれで表現した事象
となっているわけです。そして問題は、
あたりで表現したものをはずれで表現せよ
ということです。
A、B、Cの3人で2本のあたりのくじを引く
をはずれを使って表現すると
A、B、Cの3人で1本のはずれのくじを引く
ということになります。
はずれのくじが1本だけなので、誰がはずれるかということです。 選択肢の中でA、B、Cそれぞれがはずれるものを選べばいいのですが、それぞれに2つずつ選択肢が存在しています。
Aを例に取ると、
- Aがはずれのくじを引く事象
- Aだけがはずれのくじを引く事象
です。違いは一目瞭然「だけ」の有無です。この「だけ」がないと、B、Cは当たってもはずれてもよいことになります。でもはずれは1本なので、このときB、Cはあたらなければなりません。よって、答えは①③⑤になります。
この確率を計算します。排反な事象の和事象の確率は、それぞれの確率の和になるので、Aだけがはずれのくじを引く事象を$E_{A}$などとおくと、
$$ P(E_A \cup E_B \cup E_C)=P(E_A)+P(E_B)+P(E_C) $$ $$ =\frac{2}{4} \times \frac{2}{3} \times \frac{1}{2} \times 3 = \frac{1}{2} $$ と答えがでます。
(3)は条件付き確率です。問題文がそのことを教えてくれているから易しいですが、本来条件付き確率は少し厄介です。コラムで紹介しているモンティ・ホール問題もそうですし、以下の問題も有名です。
「ある人に子供が二人いる。片方は男の子とわかった。もう一人も男の子である確率を求めよ。ただし、男の子と女の子が生まれる確率は同じとする」
今回この解説は長くなるので省きますが(そのうちコラムにて)、答えは$\frac{1}{2}$ではなく、$\frac{1}{3}$になります。更にささやかな条件(電話に出たほうが男の子だったなど)がつくと今度は$\frac{1}{2}$になります。
確率は他の分野と比較して感覚的にわかりやすいと誤解しがちです。特にこの条件付き確率は感覚で考えると罠にかかります。ささやかな情報が確率の数字を変動させてしまうので、実直に場合を数え上げたり、公式に当てはめたりしたほうが確かです。
本問も条件付き確率の公式にあてはめて計算すると $$ P_{E_1}(E)=\frac{\frac{1}{2}}{\frac{5}{6}}=\frac{3}{5} $$ と求まります。
続きは次回。
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